100とは

セルビッジスリムフィットジーンズ

セルビッジスリムフィットジーンズ

友だちのような

決意して、何か新しいことをはじめる時、僕はジーンズを新調する。

新しい仕事やプロジェクトをスタートさせたり、大きな出会いがあったり、暮らしの環境が変わったとき、そして旅の出発など、まっさらなジーンズが、気持ちを引き締め、ゼロからのスタートを励まし、勇気を与えてくれるからだ。そして、あたかも、これからの歩みを記録するノートのような役割も担ってくれる。

新品のジーンズを買うと必ずすることがある。まずは裏返して、左前ポケットの生地に、決意をペンで書き込むのだ。

僕は「ニューヨーク」と書いた。

サンフランシスコからニューヨークへと向かった僕は、新しいジーンズを履き、これからニューヨークでの暮らしをはじめようと思った。

いつしか年月が経った時に、着古したジーンズを裏返して、そこに書いてある「ニューヨーク」の文字を見た時、きっとあの日あの時を思い出すだろう。そして、色落ちたジーンズの風合いを愛おしく思うだろう。

服の中でもジーンズは特別だ。膝やポケットがやぶれたジーンズ、落ちない汚れがついたジーンズ、まだ新しさが残ったジーンズなど、そのすべてがストーリーを物語っている。あの日あの時が記録された一冊の日記のようだ。そして、持っているすべてのジーンズを裏返せば、いつか書いた決意が残っている。

ジーンズは他の服と一緒には洗わない。必ず裏返して水で洗う。洗い終わったら、手でよく伸ばしてから、裏返したまま、時間をかけて陰干しする。

不思議なことにジーンズを洗うと、気持ちがリフレッシュしたような気持ちになる。「よし、またがんばるぞ」とスタートできる。

乾いたジーンズは、裏返しのまま、畳んでおく。そうすると、洗いたてであることがわかるし、ポケットに書かれた決意の文字も見えるからだ。

クローゼットを開けると、裏返したまま畳まれたジーンズがいくつも重ねて置かれている。その一本一本が、言ってみれば、自分の歴史であり、決意と約束だ。

友だちのような ストーリーイメージ

ジーンズを履く日、どれを選ぶのか。その時、感じるのは、どの友だちと出かけようか、と思うのと似た気持ちになることだ。

僕は、そんなふうにジーンズと付き合っている。裏返されたジーンズを、表に返して、足を通し、リベットボタンをはめる。ベルトを通した時の高揚感は何ものにも代え難い。

「ニューヨーク」と書いた、真新しいジーンズを履いて、僕は旅に出た。

セルビッジスリムフィットジーンズ

本気のデニム

装飾やデザインに頼らずに、品質とシルエットで勝負する。ユニクロの覚悟と挑戦を詰め込みました。デニムづくりでもっとも重要な素材には、世界屈指のデニム生地製造メーカー「カイハラ社」のセルビッジデニム※を使用。

セルビッジスリムフィットジーンズ
セルビッジスリムフィットジーンズ

通常の機械よりも手間と技術が必要なシャトル織機で生産された希少価値の高いセルビッジデニムは、綺麗な綾目で立体的な美しい風合いが最大の魅力。表面の凹凸が穿き込むほどにタテ落ちし、自分だけの味わい深い色落ちに変化します。

※カイハラ社のセルビッジデニムは69 NAVYのみに使用されています。

セルビッジスリムフィットジーンズ

ヘルズキッチン

ニューヨークに着いたのは、午後4時過ぎだった。JFK空港からタクシーに乗り、予約していたホテルの番地を運転手に告げると、「ヘルズキッチンか……」と呟いた。

予約したのは、サンフランシスコで泊まっていたホテルで知り合ったバックパッカーに教えてもらった安ホテルだった。

「ヘルズキッチンというのは?」と聞くと、「ヘルズキッチンは言葉の通り、地獄の台所だよ。俺は嫌いじゃないけれど、お前のような観光客が行くところではない」と運転手は笑って言った。

乗ったタクシーは、ずんぐりとして、やたら車高が高く、黒い皮のシートのスプリングが固くて座り心地が悪かった。助手席には、真っ黒のドーベルマンが鎮座していて、ときおり後ろを振り返り、僕を睨みつけた。

黄色のボディに、白と黒のチェック模様が入った、昔ながらのニューヨークのタクシー(通称チェッカーキャブ)に、僕ははじめて乗った。

車内はコーヒーと消毒液が混ざった匂いで充満していた。「急いでいるのか?」と運転手は聞いた。「別に急いでいません」と答えたが、タクシーは、急発進し、猛スピードで高速道路へと向かっていった。

クイーンズボロブリッジを渡り、高層ビルがひしめきあって建つマンハッタンに入ると、どこを向いても早足で歩く人、人、人ばかりで、車道はタクシーとトラックが、けたたましくクラクションを鳴らしながら走り抜けていく。

タクシーのラジオからはイタリア語のニュースが流れていた。道路がでこぼこなのか、しっかりつかまっていないと、頭を車の天井にぶつけてしまうくらいの衝撃が繰り返された。タクシーは道路を跳ねるように走った。

怒ってるのか、急いでいるのか、騒いでいるのか。これが僕のニューヨークの最初の印象だ。同じアメリカなのに、サンフランシスコとのあまりの違いに僕は目を丸くした。

ヘルズキッチンに着いたタクシーは、僕を降ろし、タイヤを鳴らして急発進して去って行った。

ヘルズキッチン ストーリーイメージ

ここがヘルズキッチンか……。僕はこの街のニックネームが、いかにもニューヨークらしくてすてきに思った。

ヘルズキッチンという名は、このエリアが世界中の料理が食べられるという意味で、今でも古き良きオールドニューヨークの雰囲気が残っていると運転手は言った。

ホテルは、小さな看板が壁に埋め込まれた、古めかしい七階建ての雑居ビルだった。

着ているシャツも、セーターも、スニーカーも着古しているけれど、履いているジーンズは真新しいのが、僕には誇らしかった。

今日からニューヨークだ。夕焼けに染まるクライスラービルが空にそびえていた。

セルビッジスリムフィットジーンズ

伝統に革新を

デニムフリークを唸らせる伝統的なセルビッジデニムに、ストレッチを配合。無骨な表情はそのままに、快適な穿き心地を両立させた革新的デニムへと進化。股上は浅めに、フィットはやや細め。トレンドに寄りすぎない、汎用性の高いスリムストレートシルエット。

セルビッジスリムフィットジーンズ
セルビッジスリムフィットジーンズ

さらにフロントポケット、ヒップポイントを高く設計することでバランスがアップ。フロントボタンやポケットを補強するリベットに入った刻印がデニムの風格に華を添えます。

洗いたてを
裏返したまま畳む。
自分への約束を書きたくなる、
そんなジーンズだ。

松浦弥太郎
セルビッジスリムフィットジーンズ
007 MENストレッチセルビッジ
スリムフィット
ジーンズ
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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