100とは

ファインクロスシャツ

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自由とは

「従うのか、逆らうのか。そのどちらを君は選ぶのか……」

あの夜、ジャズクラブのギタリストが、つぶやいた言葉が、いつまでも心に残っていた。

朝コーヒーとドーナツを食べているとき。洗いたてのTシャツの袖に腕を通しているとき。ポケットに手を入れて、テンダーロインの坂を登っているとき。ホテルの部屋の窓から見える景色を、ぼんやりと一人で眺めているとき。しばらく会っていない両親に手紙を書いているとき。

その言葉が、いつも頭の中に、ふわっと浮かび上がっては、さあ、君はどっちなんだい? と問いかけてきた。

そんなこと、どうでもいいじゃないか。好きにすればいい。こだわることはないさ。ひとつ言えることは、こうさ、その時に、楽なほうを選べばいいのさ、それが自由なんだ、と思うような自分もいた。

けれども、確かなことがひとつあった。それは、英語も話せず、誰のあてもないサンフランシスコに一人でやってきたことは、何かに従ったことではなく、少なからず自分で考えて決めたということだった。

自由とは ストーリーイメージ

そう、この旅は、僕の逆らいの証そのものなのだ。

逆らうというのは、こうしろと決められたことに、ノーと答える意志表示ではない。

目の前のどんなことにもしっかりと向き合い、他にもっと良い方法や考え方があるかもしれないと疑問を持ち、どうすれば正しいのかを自分で考え抜いて、自分で決めるという姿勢ではなかろうか。

そして、逆らうとは、他のもっと良いアイデアを出すという、建設的で、前向きで、新しい方法や考え方の発明をあきらめないという生き方。

ギタリストが言いたかったことは、「君は、考えることを誰かにまかせるのか? それとも、自分で考えるのか?」もっと言うと、「君は恐れるのか?、恐れないのか?」ということではなかろうか。

楽なほうを選ぶことが自由ではない。ほんとうの自由とは、何事にも恐れない自分でいること。すなわち、まずは自分で考えて、自分で決めるということなのだ。

僕は、目の前の霧が、きれいに晴れたような気持ちで一杯になった。

ギタリストの言葉は、この旅が与えてくれた宝もののひとつになった。

ファインクロスシャツ

徹底したこだわり

袖を通した時にわかるのは軽やかできめ細やかな生地の肌触り。上質な原糸を通常よりも細く撚った100番双糸を使用することで生まれる品格ある光沢。お洗濯後もシワになりにくいイージーケア加工を施し、ハリコシのある風合いと美しい艶が特徴です。

ファインクロスシャツ
ファインクロスシャツ

仕立ての良さを決定づける芯地は、いくつもの試作を経て“硬すぎず、柔らかすぎない”を実現した自信作。肌に直接触れる襟周り、カフス、前立てに採用しています。

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2枚のシャツ

「その本、僕も大好きです。若い頃よく読んだんですよ……」

サンフランシスコからニューヨークへ向かう飛行機の機内で、隣に座った日本人の紳士から声をかけられた。

僕は、リチャード・ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』を読んでいた。

その人は、身なりがぴしっとしたビジネスマンだった。仕事でアメリカを訪れていると言った。きらきらした目や、その気さくで柔和な笑顔に、僕はすぐに心を打ち解け、これまでの日々の出来事を、ぽつりぽつりと話した。

「わかるなあ。なんだか君は、僕に似ているような気がします」

その人も若い頃、世界中を旅した経験があるらしく、旅の楽しさやつらさ、旅で得たことと失ったこと。自分はこんなふうに旅してきたという話を、フライト中、ずっと僕に話し続けてくれた。

「こんなふうに旅先で、日本人の、しかも旅の先輩と出会えるなんて、ほんとうにうれしいです」

「旅人は、必ず旅先で、同じ旅人と出会うんですよ。僕もそうでした」と、その人は言った。

僕は、何か旅のアドバイスをひとつしてくれませんか、とお願いをした。するとその人はこう答えた。

「きれいなシャツを2枚、僕は今でも、旅をするときに必ず持っていきますね」

2枚のシャツ ストーリーイメージ

その理由を聞いてみた。

旅先で知り合った人から、家に招かれたり、食事を誘われたりした時に、きれいなシャツを着ていくのがマナーだ。着の身着のままでは、ちょっと失礼だ。もしかしたらデートに誘われることもあるかもしれない。そのために、できれば、ぴしっとアイロンのかかった、きれいなシャツを備えておくといい。

もう1枚のシャツは、旅を終えて日本に帰るときに着るシャツだ。汚れた服を着て帰るのではなく、これもまた、ぴしっとアイロンのかかったきれいなシャツを着て、家に帰るというのが、旅の流儀として大切なことではないか、時にはそのために新品のシャツを準備することもあると、その人は言った。

「またどこかで会いましょう」

僕とその人はJFK空港で別れた。

旅を終え、家に帰るために、きれいなシャツを着る。終わり方の美学とでも言おうか。

なんてすてきな旅なのだろうと思った。

ファインクロスシャツ

みんなの“ふつう”であるために

XSから4XLまで全てのサイズ※でフィッティングテストを繰り返し、着丈、アームホール、ショルダーヨークを設計。どんな人にも“ふつうのシャツ”であるための、動きやすさと、すっきりスリムに見えるデザイン。

ファインクロスシャツ
ファインクロスシャツ

他にも3cmの幅に17針という精度の高い丁寧な縫製などこだわりのポイントは数知れず。少しずつアップデートを繰り返して、たどり着いたシャツの理想形。

※通常店舗ではS.M.L.XLのサイズ展開で販売をしております。

着るたびに気づく
うれしいこだわり。
毎日着たくなる、
最高品質のシャツ。

松浦弥太郎
ファインクロスシャツ
006 MENファインクロスブロードシャツ(長袖)
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LifeWear Story 100とは。

ユニクロには、
流行に左右されず、
けれども、決して古びることのない、
長い間、作り続けている普通の服がある。
品揃えの中では、
とても地味で目立たない存在である。
コマーシャルにもあまり出てこない。

それらは、ユニクロが、
もっと快適に、もっと丈夫に、
もっと上質であることを、
長年、愛情を込めて追求したものだ。

それらは、ユニクロの人格と姿勢が、
目に見えるかたちになったものであり、
丹精に育てているものだ。

昨日よりも今日を、今日よりも明日と。

手にとり、着てみると、
あたかも友だちのように、
その服は、私たちに、
こう問いかけてくる。

豊かで、上質な暮らしとは、
どんな暮らしなのか?
どんなふうに今日を過ごすのか?
あなたにとってのしあわせとは何か?と。

そんな服が、今までこの世界に、
あっただろうかと驚く自分がいる。

ユニクロのプリンシプル(きほん)とは何か?
ユニクロは、なぜ服を、
LifeWearと呼んでいるのだろう?
LifeWearとは、どんな服なのだろう?

ここでは、LifeWearの、
根っこを見る、知る、伝える。
そして、LifeWearと、自分にまつわる、
ストーリーを書いていきたい。

LifeWear Story 100は、
LifeWearと僕の、旅の物語になるだろう。

松浦弥太郎

松浦弥太郎
松浦弥太郎

エッセイスト、編集者。1965年東京生まれ。
2005年から15年3月まで、約9年間、創業者大橋鎭子のもとで『暮しの手帖』の編集長を務め、その後、ウェブメディア「くらしのきほん」を立ち上げる。現在は(株)おいしい健康の取締役に就任。数々のメディアで、高い審美眼による豊かで上質な暮らし提案に努めている。新聞、雑誌の連載の他、著書多数。ベストセラーに「今日もていねいに」「しごとのきほん くらしのきほん100」他多数。NHKラジオ第一「かれんスタイル」のパーソナリティとしても活躍。

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