たった一枚のTシャツにも、平和のためにできることがある。
~ 服のチカラ 29号 ~
暴力を伴うしつけなど、子どもへの対応に課題が見られるカンボジアの農村地帯で、笑顔をとりもどすために行われたこと。
カンボジアの学校や家庭では、言葉や身体的な暴力を経験したことのある子どもが少なくありません。PEACE FOR ALLはコンポンチャム州の公立小学校43校で約1万2600人*¹の子どもたちを対象に、身体的暴力やいじめ、差別、児童労働を防ぐため、地域と連携した啓発活動や仕組みづくりを実施しました。身近なところにある暴力をなくしてゆくことで、穏やかな日常と明るい未来を実感できるように──。ティナさんは小学6年生。メコン川での漁で生計を立てている両親が、家を留守にする時間が長いため、ふだんは祖父母の家で暮らしています。将来、教師になることがティナさんの夢。PEACE FOR ALLの取り組みが、その思いを後押ししています。
PEACE FOR ALLを通じて「セーブ・ザ・チルドレン」がカンボジアで取り組んでいるのは、「子どもを暴力から守る」ためのプロジェクトです。この取り組みによって、学校や家庭、地域でのあらゆる暴力を防止する学びが広がり始めています。
子どもがさらされる暴力とは、どういうものか。
それはたとえば「子どもを躾けるため」と称し、大人からふるわれる暴力です。叩かれたりするほか、ひどい言葉で理不尽に怒鳴られる──それも暴力。
日本でも半世紀ほど前、親や教師から暴力的な仕打ちを受けても、そういうものだと諦める風潮がありました。さらに時代をさかのぼれば、農繁期に親の農作業を手伝うため学校を休まされる子どもも珍しくありませんでした。強制的に働かされるのも、暴力です。
カンボジアの農村ではいまも、カシューナッツやマンゴーの収穫の時期になると、小学校高学年の生徒が2、3ヶ月、登校しなくなるケースがあります。学校を休ませて働かせる慣習が残されているのです*²。子どもの教育を受ける権利と機会を奪うのも、暴力です。

校内の看板には、子どもが大人に手を合わせ、頭を下げる図柄があった。
時間をかけ、自分の頭で考える

暴力、いじめ、差別、児童労働──といったものがなぜ問題なのか。どうやってなくしていけばいいのか。皆で学び、暴力撤廃に取り組んできたティナさんの学校。授業内容に真剣に耳を傾ける空気が教室内に満ちていました。
カンボジアでは半世紀前、隣国ベトナムとの戦争があり、さらに国内では、ポル・ポト政権による知識人、旧体制指導者、教師などへの弾圧、殺害が行われ、犠牲者が150万人以上におよぶ歴史が残っています。現在も、タイとの国境紛争の火種は消えていません。
そのような現在と歴史があるなかで、子どもに対する暴力の根絶は、カンボジアの国家的課題となっています*³。教育現場では教育省がその旗振り役ですが、課題の解決には教育の現場ばかりでなく、親世代や地域社会全体の意識改革も求められ、学校から地域社会にまで広がってゆく必要があります。
しかしまず、被害を受ける子どもたちに「どのような行為が暴力で、暴力を受けた場合はどうすればよいのか」を明確に伝えること。安心した状態でいられる学校のなかで、クラスメートとともに学び、考えること。みずから発言し、話し合うこと。自覚をもつことができた子どもたちから、親や地域社会へと広げてゆくこと──時間はかかりますが、そこから始めるのが確かな方法なのです。
「子どもの権利の推進」を目標に活動するセーブ・ザ・チルドレンはPEACE FOR ALLを通じた寄付金により、カンボジアの子どもに対する暴力撤廃促進のプログラムに約2年前から取り組んでいます。コンポンチャム州の全公立小学校43校、約1万2600人の子どもたちを対象にしています。
子どもたちが選んだ方法

親の気持ちを想像しながら、親や大人の役も熱演する生徒たち。
教室で身体的暴力やいじめ、差別、児童労働などについてのレクチャーを受けはじめたティナさんは、「学校のなかでも、乱暴な態度や傲慢なふるまいはある」と気づきます。「肌の色や家庭環境によって差別したり、傷つけたりする言葉が投げつけられることも」。
ティナさんが学んだもうひとつのおおきなことは、「暴力は身体だけでなく、心までも傷つける」こと。
暴力撤廃促進を学ぶ時間は、週に一度の生徒会の時間などを使って行われていきます。一回かぎりの特別な授業というスタイルではなく、定期的で日常的なものとして組み込まれることによって、生徒たちの理解はより深まっていきます。
学んだことを自分たちから、親や地域社会にどうやって伝えればよいのか。この課題についても、生徒たちの自主性に委ねられます。
約2年後、子どもたちが選んだのは、演劇という方法でした。日常のなかにある暴力を、お芝居のかたちに変えて演じながら、それがよくないことだと伝える。その台本も、おたがいに話し合いながらつくりあげてゆきます。役を割り振り、セリフを覚え、どうすればもっとうまく伝わるか、演出の相談も重ねました。
コミュニティイベントの場を設け、親や地域社会の人たちを招待します。学んだことを、親や地域社会のひとたちにどう伝えるか。その工夫もまた、暴力防止の理解をより深めてゆくことになります。
大人たちの目も真剣なものに

暴力撤廃促進プログラムに積極的に取り組む生徒たち。
この演劇のほかにも、校長や行政の役人、子どもたちも加わった暴力撤廃をめぐってのパネルディスカッションが行われました。司会進行は子どもたち。
最初は戸惑い気味にも見えた観客席の親や地域社会の人たちは、いきいきと演じ、堂々と意見を言う子どもたちを見るうち、真剣な目に変わってゆきます。子どもたちの姿にこころ動かされたのです。
「この取り組みをもっと多くの人々に知ってもらい、みんなに理解してもらって、暴力から解放された安心な暮らしと場所が広がってほしい。……私には夢があるんです。将来学校の先生になって、笑顔が溢れる教育を届けること。私にとっての「PEACE」とは、子どもたちが恐れることなく、笑顔で明るい未来を思い描けることです」
ティナさんの笑顔は、晴れ晴れとしています。
*1 https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?c=5
*2 現地視察・関係者ヒアリングに基づく
*3 Cambodia’s National Plan to End Violence Against Children | UNICEF Cambodia (https://www.unicef.org/cambodia/reports/cambodias-national-plan-end-violence-against-children)
■PEACE FOR ALL について
「PEACE FOR ALL」は、「世界の平和を心から願い、アクションする」という趣旨に賛同した著名人の方々にボランティアでご協力をいただき、それぞれの平和への願いをデザインしたTシャツを販売するものです。利益の全額(1枚当たり日本における定価の 20%相当)は、貧困、差別、暴力、紛争、戦争などによって被害を受けた人々を、世界各地で支援する団体へと寄付され、それぞれの活動に役立てられます。
■寄付先について
国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)https://www.unhcr.org/jp/

セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children) https://www.savechildren.or.jp/

プラン・インターナショナル (Plan International) https://www.plan-international.jp/

難民映画基金 (Displacement Film Fund) https://iffr.com/en/dff

暴力を伴うしつけなど、子どもへの対応に課題が見られるカンボジアの農村地帯で、笑顔をとりもどすために行われたこと。
カンボジアの学校や家庭では、言葉や身体的な暴力を経験したことのある子どもが少なくありません。PEACE FOR ALLはコンポンチャム州の公立小学校43校で約1万2600人*¹の子どもたちを対象に、身体的暴力やいじめ、差別、児童労働を防ぐため、地域と連携した啓発活動や仕組みづくりを実施しました。身近なところにある暴力をなくしてゆくことで、穏やかな日常と明るい未来を実感できるように──。ティナさんは小学6年生。メコン川での漁で生計を立てている両親が、家を留守にする時間が長いため、ふだんは祖父母の家で暮らしています。将来、教師になることがティナさんの夢。PEACE FOR ALLの取り組みが、その思いを後押ししています。
PEACE FOR ALLを通じて「セーブ・ザ・チルドレン」がカンボジアで取り組んでいるのは、「子どもを暴力から守る」ためのプロジェクトです。この取り組みによって、学校や家庭、地域でのあらゆる暴力を防止する学びが広がり始めています。
子どもがさらされる暴力とは、どういうものか。
それはたとえば「子どもを躾けるため」と称し、大人からふるわれる暴力です。叩かれたりするほか、ひどい言葉で理不尽に怒鳴られる──それも暴力。
日本でも半世紀ほど前、親や教師から暴力的な仕打ちを受けても、そういうものだと諦める風潮がありました。さらに時代をさかのぼれば、農繁期に親の農作業を手伝うため学校を休まされる子どもも珍しくありませんでした。強制的に働かされるのも、暴力です。
カンボジアの農村ではいまも、カシューナッツやマンゴーの収穫の時期になると、小学校高学年の生徒が2、3ヶ月、登校しなくなるケースがあります。学校を休ませて働かせる慣習が残されているのです*²。子どもの教育を受ける権利と機会を奪うのも、暴力です。

校内の看板には、子どもが大人に手を合わせ、頭を下げる図柄があった。
時間をかけ、自分の頭で考える

暴力、いじめ、差別、児童労働──といったものがなぜ問題なのか。どうやってなくしていけばいいのか。皆で学び、暴力撤廃に取り組んできたティナさんの学校。授業内容に真剣に耳を傾ける空気が教室内に満ちていました。
カンボジアでは半世紀前、隣国ベトナムとの戦争があり、さらに国内では、ポル・ポト政権による知識人、旧体制指導者、教師などへの弾圧、殺害が行われ、犠牲者が150万人以上におよぶ歴史が残っています。現在も、タイとの国境紛争の火種は消えていません。
そのような現在と歴史があるなかで、子どもに対する暴力の根絶は、カンボジアの国家的課題となっています*³。教育現場では教育省がその旗振り役ですが、課題の解決には教育の現場ばかりでなく、親世代や地域社会全体の意識改革も求められ、学校から地域社会にまで広がってゆく必要があります。
しかしまず、被害を受ける子どもたちに「どのような行為が暴力で、暴力を受けた場合はどうすればよいのか」を明確に伝えること。安心した状態でいられる学校のなかで、クラスメートとともに学び、考えること。みずから発言し、話し合うこと。自覚をもつことができた子どもたちから、親や地域社会へと広げてゆくこと──時間はかかりますが、そこから始めるのが確かな方法なのです。
「子どもの権利の推進」を目標に活動するセーブ・ザ・チルドレンはPEACE FOR ALLを通じた寄付金により、カンボジアの子どもに対する暴力撤廃促進のプログラムに約2年前から取り組んでいます。コンポンチャム州の全公立小学校43校、約1万2600人の子どもたちを対象にしています。
子どもたちが選んだ方法

親の気持ちを想像しながら、親や大人の役も熱演する生徒たち。
教室で身体的暴力やいじめ、差別、児童労働などについてのレクチャーを受けはじめたティナさんは、「学校のなかでも、乱暴な態度や傲慢なふるまいはある」と気づきます。「肌の色や家庭環境によって差別したり、傷つけたりする言葉が投げつけられることも」。
ティナさんが学んだもうひとつのおおきなことは、「暴力は身体だけでなく、心までも傷つける」こと。
暴力撤廃促進を学ぶ時間は、週に一度の生徒会の時間などを使って行われていきます。一回かぎりの特別な授業というスタイルではなく、定期的で日常的なものとして組み込まれることによって、生徒たちの理解はより深まっていきます。
学んだことを自分たちから、親や地域社会にどうやって伝えればよいのか。この課題についても、生徒たちの自主性に委ねられます。
約2年後、子どもたちが選んだのは、演劇という方法でした。日常のなかにある暴力を、お芝居のかたちに変えて演じながら、それがよくないことだと伝える。その台本も、おたがいに話し合いながらつくりあげてゆきます。役を割り振り、セリフを覚え、どうすればもっとうまく伝わるか、演出の相談も重ねました。
コミュニティイベントの場を設け、親や地域社会の人たちを招待します。学んだことを、親や地域社会のひとたちにどう伝えるか。その工夫もまた、暴力防止の理解をより深めてゆくことになります。
大人たちの目も真剣なものに

暴力撤廃促進プログラムに積極的に取り組む生徒たち。
この演劇のほかにも、校長や行政の役人、子どもたちも加わった暴力撤廃をめぐってのパネルディスカッションが行われました。司会進行は子どもたち。
最初は戸惑い気味にも見えた観客席の親や地域社会の人たちは、いきいきと演じ、堂々と意見を言う子どもたちを見るうち、真剣な目に変わってゆきます。子どもたちの姿にこころ動かされたのです。
「この取り組みをもっと多くの人々に知ってもらい、みんなに理解してもらって、暴力から解放された安心な暮らしと場所が広がってほしい。……私には夢があるんです。将来学校の先生になって、笑顔が溢れる教育を届けること。私にとっての「PEACE」とは、子どもたちが恐れることなく、笑顔で明るい未来を思い描けることです」
ティナさんの笑顔は、晴れ晴れとしています。
*1 https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?c=5
*2 現地視察・関係者ヒアリングに基づく
*3 Cambodia’s National Plan to End Violence Against Children | UNICEF Cambodia (https://www.unicef.org/cambodia/reports/cambodias-national-plan-end-violence-against-children)
■PEACE FOR ALL について
「PEACE FOR ALL」は、「世界の平和を心から願い、アクションする」という趣旨に賛同した著名人の方々にボランティアでご協力をいただき、それぞれの平和への願いをデザインしたTシャツを販売するものです。利益の全額(1枚当たり日本における定価の 20%相当)は、貧困、差別、暴力、紛争、戦争などによって被害を受けた人々を、世界各地で支援する団体へと寄付され、それぞれの活動に役立てられます。
■寄付先について
国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)https://www.unhcr.org/jp/

セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children) https://www.savechildren.or.jp/

プラン・インターナショナル (Plan International) https://www.plan-international.jp/

難民映画基金 (Displacement Film Fund) https://iffr.com/en/dff
