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TODAY'S PICK UP

故郷から2000キロ離れて
~ 服のチカラ 23号 ~

Jul 17, 2025
LifeWear
人々の生活をより豊かに快適にする服「LifeWear」の考え方をもとに、サステナビリティ活動をはじめ、さまざまな社会課題に対して、"服を通してできること"をテーマに構成する「服のチカラ」。23号では、2022年に世界で故郷を追われた人々が1億人を超えたという状況を受け、改めて難民問題について考えました。ウクライナから避難した女性が、オランダにたどり着き、ユニクロの店舗で働き、生活の基盤を築くまでや、ウクライナ危機の勃発から約5日で、現地への服の寄贈を開始したユニクロEUチームの取り組みと、その実現の支えになったNGOの思いを取り上げています。


婚約者との海外旅行。帰国の前日にすべてが変わってしまいました。



ダリア・バラノフスカさん/オランダ、アムステルダムの「ユニクロ カルファー通り店」勤務。同店にはダリアさんのほか、難民支援で採用されたスタッフが4人働いている(2022年6月現在)。


アニメーション映画と哲学に関心の深いダリアさんは、ウクライナのキーウ生まれ、キーウ育ち。婚約者とポーランド旅行に出て、帰国しようとする前日、ロシアによる軍事侵攻が始まりました。

婚約者のアレックスと旅に出たのは、2月5日のことでした。行き先は隣国のポーランドです。ポーランド王国の時代に首都だった、古い伝統と歴史のある街、クラクフに滞在していました。

婚約者のアレックス(左)とダリアさん


帰国の予定は2月25日でした。その前日の朝5時、まだ暗いなかでアレックスに起こされました。彼は深刻な声で私に言いました。「キーウに帰れなくなった」ロシア軍のウクライナ侵攻が始まったのです。
生まれ育ったキーウの周辺も攻撃されていました。これからどうなるのか、まったくわかりません。昼になっても呆然とテレビのニュースを見つづけていると、自動車でウクライナを脱出する人が続出し、キーウからポーランドに向かう道路が500キロ以上の大渋滞になっていました。見たこともない光景でした。

目に入り、耳に聞こえてくることに気持ちが追いつきません。想像もしなかったし、望んだわけでもない新しい人生が、こうして始まってしまったのです。
アレックスは「ウクライナに戻って戦うべきではないか」と何度も言いました。しかし、ポーランドにいても支援できることはあるはず、と真剣に話し合いました。キーウにいるアレックスの母は自分で車を運転し、私たちのいるポーランドを目指すことになりました。なんとかクラクフにたどりついてもらい、その先のことはそこで考えようと連絡をとりあいました。

ウクライナのキーウからオランダのリンメンまで、約2,000キロの陸路。



オランダで家を借りる




事情があって大学院は途中で辞め、映画制作の現場にかかわったり、編集の仕事を手伝ったりしていました。その後、Amazonでオンラインのカスタマーサービスの仕事に就きました。こうして帰れなくなるまで、それが私の定職でした。アレックスはPR会社に勤務していて、いまもオンラインで仕事を続けています。

15時間も運転を続けたアレックスの母は、なんとか国境を越え、私たちと合流することができました。これからどうやって暮らしてゆくか相談しているとき、アレックスの母の親友から、オランダで観光客に貸し出す部屋を持っている知人がいる、いまは誰もいないから無料で使っていいそうよ、というありがたい連絡が入りました。

私たちはポーランドからさらに西を目指し、国境を越えてドイツを横断、つづいてオランダに入り、アムステルダムの北にあるリンメンに向かいました。
アレックスの母の親友を通じて紹介された家は、緑豊かな田園に囲まれたすばらしい環境のなかにありました。アレックスと、彼の母と、いま3人でこの家に暮らしています。戦争が起こらなければ、やってくることもなかった土地。キーウから西に2000キロも離れたリンメンが、いま私たちが暮らす町です。

家を借りることはできたものの、旅の途中だったアレックスと私は冬服しか用意がなく、アレックスの母もほとんど荷物を持たずに脱出してきたので、足りないものばかりでした。
隣町のコミュニティがオープンしたチャリティの店があると聞きつけて、さっそく訪ねてみました。この店で、暮らしに必要な日常品を無料で手に入れることができました。とても助かりました。

ウクライナからの避難民は女性や子どもが大半です。店には赤ちゃん用品や子ども用品、玩具まで用意されていました。地元のみなさんの知恵や経験、気持ちがこめられているのが伝わってきて感激しました。

何度か通うあいだに顔馴染みになり、「あなたたち、自転車が必要なんじゃない?」と声をかけられました。たしかに近所の人たちはみな自転車に乗っていますし、駅まで行くのにも便利そうです。「もし手に入るようなら」とお願いしてみたら、1時間もしないうちに自転車が届けられたんですね。びっくりしました。

キーウではふだん自転車に乗っていなかったので、ふたりでまず練習のために家のまわりを漕いでみて、駅まで自転車で行けるようになりました。家のあたり一帯は田園ですから、サイクリングするのも気持ちよくて、気分転換になります。

チャリティの店を運営するセンターは、オランダに暮らし始めて15年というロシア人女性が立ち上げたものでした。生活必需品の提供ばかりでなく、オランダの共通語といえる英会話のレッスンを行なったり、避難民にとってあらゆる有益な情報が得られたりする場所になっていました。



アニメーション映画と実存主義哲学



ダリアさんの愛読書。ポーランドの旅に携行したアニメーション史の本(下)と、母に譲られた哲学入門書。


大学院では経済学を学んでいました。もともと映画が好きだったので、キーウの映画館チェーンの仕組みをどのように改善すればよいかについて研究しようとしていました。子どもの頃から映画館に通っていたので、配信が全盛になっても、映画館で観る映画のすばらしさをこれからも残していきたいと考えていました。

映画化されたジェーン・オースティンの「自負と偏見」のように古典的な人間ドラマも好きですし、ウォルト・ディズニーの古い名作からピクサーの新作、宮崎駿の作品も大好きです。「千と千尋の神隠し」がウクライナで公開されたのは7歳のときでした。

経済学の博士号をとるには専門科目以外に哲学と英語が必須でした。そのおかげで哲学を学ぶようになって、俄然、哲学がおもしろくなったのです。その頃はまだ元気だった母から、昔の愛読書だったという哲学の入門書を手渡されました。この本のおかげで、無神論のディドロや実存主義のサルトルに関心をもつようになりました。専攻を哲学に変えたいと思うほど、つよい影響を受けました。

ウクライナのシンボルがデザインされた母のネックレスと、キーウの植物園で撮った幼いダリアさんと母の写真。



会話のできる時間と仕事が必要



店で物を受け取るばかりでなく、自分なりに協力できることを探しました。そのうちに、地元の方々が提供してくださる品物の受け取りや整理、店の掃除などを手伝うようになったんです。こうして参加することで、自分が地域コミュニティの一員になった実感も生まれてきました。

それからほどなく、アムステルダムのユニクロで、ウクライナ避難民を対象とした採用があると知りました。ウルトラライトダウンを買って着ていましたから、ユニクロには親しみがありました。店頭でお客さまと直接のコミュニケーションができる仕事をやってみたいなと思ったのです。

ずっと家にいるばかりだと、キーウの親族や友人のことばかり考えてしまいます。ウクライナと戦争のことが頭を離れない。これからどうなるのだろうということも。お客さまと会話しながら仕事をすれば、自分のなかに閉じこもっていられなくなります。そういう場所と時間が自分には必要だと感じたのです。

現在は希望どおり、店舗でのお客さま対応の仕事をしています。スタッフといっしょに働くのも楽しい。ここでの仕事がとても気に入っています。


アムステルダムは世界中から人が集まってくる都市なんですね。人口の半分くらいがオランダ国外からやってきた人々です。ここで働く人もお客さまも、さまざまなバックグラウンドを持っています。考え方やメンタリティーも微妙にちがう。それがおもしろい。

毎日お客さまと接しながら、頭を働かせています。たとえば「この服、真冬でも暖かく過ごせるかしら」と質問されたら、ノルウェーから来たお客さまと、スペインから来たお客さまとでは冬の厳しさが違います。当然答えも違ってきます。「気温が零下になる場合には、これ1枚だけでは寒いかもしれませんね」と答えるようにすればいい、と気づくようになりました。アムステルダムの多様性から学んだことです。


いつかウクライナに帰る日



散歩コースにある羊の牧場。ウクライナのシンボルが象られたネックレスは母の形見。


私の英語のアクセントやイントネーションで、「あなたはどこから来たの」と質問されることもあります。ウクライナ語はロシア語よりもイントネーションの柔らかさがあって、イタリア語みたいにメロディアスだと言われることもあります。ところがあるお客さまから「あなたの英語はウクライナ語なまりというより、もうちょっとアクセントが強い気がする」と言われたことがありました。私はウクライナ語と同じようにロシア語もできるので、私の英語にはアクセントの強いロシア語なまりがあるのかもしれない、と気づかされたりもして、対面の仕事ならではの発見があります。人と直接にやりとりできる仕事に、張り合いを感じています。

もちろん、いつの日かウクライナに帰りたいです。いま自分が祖国にいないということにアレックスは日々苦しんでいます。ただ、現実的に考えれば、しばらくのあいだ帰ることはかなわないでしょう。

いったん戦争が始まってしまうと、平和をとりもどすまでにたいへんな労力と時間が必要になります。人命も失われます。平和な暮らしを送っているときは意識していませんでしたが、平和は簡単に手に入るものではない、ということを思い知らされました。それでも、平和をあきらめず、祖国を忘れることなく、毎日を過ごしていこうと思っています。


ウクライナ危機の発生直後、ヨーロッパのユニクロはどのように動いたのか。NGOとの連携、人道支援の寄付の仕組みを店舗やウェブで構築するまで。
マリア・サモト・ル・ドウスさん/EU サステナビリティ部 リーダー



「戦争が始まって5日後には、ユニクロの服、約5万点をポーランドに届けました」と話すマリアさん。


侵攻が始まったのは木曜日でした。週明けにはSNSやカスタマーサービスの窓口に、支援についてのお客さまの要望が届き、社内からの問い合わせや提案も続々と集まっていました。
ウクライナから避難した人のほとんどが女性、子ども、高齢者です。拠点となったポーランドは氷点下。保温性の高い服の提供が急務でした。

4年以上にわたって信頼と協力関係にあるNGOの「Goods for Good」に連絡をとって、倉庫にある防寒用衣料などを託すことになりました。火曜日にはポーランドに約5万点の服を届けることができたのです。

これほど大規模の緊急事態は、6年前のシリア内戦以来でした。当時私はドイツに住んでいましたので、ドイツが1年間に120万人もの難民を迎え入れた状況を身近で経験していました。
衣料支援や難民雇用は、NGOやUNHCRなどの組織との連携があり、さらに社内のボランティアの働きも得て、はじめて最大の効果があげられる、と身を以て知る経験でもありました。
今回も衣料支援につづき、ウクライナ避難民の雇用は国内法が整っているドイツとオランダで先行して始まりました。2ヶ月あまりで20人ほどのウクライナ避難民が雇用されることになりました。


文化的背景への相互理解



私たちは、国籍や出身による雇用での差別は絶対にしません。様々なバックグラウンドの人が集まることによって、お互いに敬意を持ちながら協働すれば、よいチームワークが生まれ、店舗運営も、お客さまへのサービスの質も、向上する、とこれまでの経験で知っています。

文化的な背景についての相互理解は必要です。宗教や生活習慣などの違いを理解しないと、ちょっとした身振りで誤解される場合もあるからです。たとえば、アフリカのある地域では、先生や上司の目をまっすぐには見てはいけない、という文化があります。それを知らずにコミュニケーションをとると、悲劇的な誤解が生まれかねません。ウクライナは同じヨーロッパ圏なので、共通するところがほとんどなのですが、文化の相違はつねに意識すべき課題です。


寄付の方法、仕組みをつくる



転売防止のため、服のタグを切る作業を手伝う。


寄付についても衣料支援と同時に始めました。社内でファンドレイジングプログラムを立ち上げ、社員から寄付金を募るところから始めて、これはお客さまにも広がりました。ユニクロのオンラインのトップページでは、UNHCRへの寄付に誘導するバナーをアップしました。

店頭でも寄付ができる仕組みもつくりました。買い物の合計金額には必ず端数が出ます。希望されたお客さまには、その端数分をUNHCRに寄付できる仕組みです。これはカードプロバイダー会社の協力で可能になり、6月末時点で、3万人以上のお客さまから10万ユーロの寄付が集まりました。
店頭で気軽にできる方法が、お客さまの気持ちのハードルを下げてくれたのだと思います。

ウクライナの危機が契機となり、難民問題に対する注目度は飛躍的に高まりました。しかし難民問題はウクライナにとどまりません。アフガニスタン、シリア、スーダン、ミャンマー…世界各地で事態は深刻化し、長期化しています。世界のどこであっても、等しく取り組まなければならないのが難民支援です。特別な活動ではなく、誰もが参加でき、日常的に進めてゆくことのできる支援をこれからも続けます。


必要とする人々に、必要とされる物を確実に届ける。これが何より大切です。
ロザリンド・ブルーストーンさん
Goods for Good代表



ロザリンドさんはイギリスの慈善団体で12年働き、8年前に自らNGOを立ち上げ、全世界25カ国へ人道支援を行っている。


紛争や貧困、自然災害などで困難な状況にある人々を支援するNGO「Goods for Good」。ロンドン郊外にある本部を訪ねて、支援の考え方や仕組み、実態についてうかがった。
ロンドンの北西部、ワトフォードの住宅街に「Goods for Good」の本部がある。貧困や自然災害に苦しむ地域、紛争などにより故郷を追われた人々に、適切な物資(Goods)を送り届けるNGOだ。
支援物資といえば、2011年の東日本大震災の光景が浮かぶ。被災地には全国各地から食料、水、薬、服などが段ボール箱に詰められ、続々と届けられた。中身がはっきりしているものも少なくなかった一方で、開けてみないとわからない段ボール箱が、学校の体育館などに積み上げられ、被災地のボランティアがひとつひとつ開けては、利用できるもの、できないものを分別する作業に追われる光景もあった。


160人の孤児に、160個のテディベアを




「Goods for Good」代表のロザリンド・ブルーストーンさんは、このように言う。

「現地に何を届けるかの原則はシンプルです。必要とする人々に、必要とされる物を確実に届けることです。私たちの仕事はつねに、誰がどんなものを必要としているかを知ることから始まります。使われないものを送ってしまうとゴミになってしまいますし、車で運ぶエネルギーも余計にかかり、地球環境に負荷をかけてしまいます。いずれにしても、蓋を開けるまで何が入っているかわからない支援物資は、緊急を要する現場に、余計な労力をかけることになります」
本部の建物は決して大きくない。かつて建設資材を扱う会社が入っていたので、小ぶりの倉庫スペースはある。そこにも物資のストックがあるが、ユニクロから請け負ったポーランド行きの5万点の服はいったいどこから発送されたのだろうか。

「倉庫はイギリスの北部に2カ所、オランダに1カ所あります。ユニクロの服はオランダの倉庫に109のパレットに載せて届けられました。ひとつのパレットには大きな段ボールが18箱載ります。そこからポーランドに向けて、最短で運ばれていきました」
取材に行った日は、あらたに要請のあったユニクロの子ども服を、転売防止のためタグを切り取ってから、ウクライナ避難民の受け入れ先であるウェールズまで運ぶ作業が行われた。こうした活動はすべてボランティアが行っている。おだやかな表情の寡黙な男性が、段ボールを運び出し、車に載せてゆく。


「まもなく、ウクライナで戦争孤児になってしまった160人をイギリスが受け入れることになっています。服はもちろんですが、それとは別に、私たちの提携先の老舗デパートにテディベアを160人分提供してもらえないかと相談しました。結局その2倍くらいの数のテディベアが私たちのもとに届けられました」
寒さや飢えの手当てはできる。しかし、失われた親に代わるものはない。それでもなおテディベアは小さな腕に抱えられるのにふさわしいだろう。モノはかならずしもモノにとどまらない意味をもつ。ロザリンドさんのモノの考えには、こうしたものも含まれている。
なるほどと思ったのは、携帯のSIMカードだった。「昔は存在すらしていなかったのに、いまでは国境を越える際の必需品になりました。これも携帯通信会社から8500枚の無償提供を受けることができました。ウクライナからの方々にはたいへん喜ばれました」

携帯用20GBのSIMカード



私たちの課題はやはり資金です



ウクライナ難民の受け入れ国であるモルドバはヨーロッパの「最貧国」とも呼ばれており、「Goods for Good」は、ウクライナからの避難民にとどまらず、貧困に苦しむモルドバの人々にも支援物資を送り続けている。
最後に、たったいま「Goods for Good」が必要としているものは何でしょうかとうかがった。
「私たちの課題はやはり資金です。貧困や自然災害、紛争に苦しむ人々がこれほど膨大な数になり、届ける先も増えるなかで、品物を管理し、発送する倉庫の拡充や、活動の拠点となる事務所の整備のための資金的余裕がないのが実情です。いまは、協力してくださる企業や団体、個人のおかげでなんとか回していますが……。とはいっても、ほんとうに苦しいのは私たちではなく、支援を待っている人たちなのです」

取材当日は、ユニクロの子ども服をウェールズのボランティアが引き取りに来る日だった。ユニクロのスタッフも作業を手伝い、荷物は無事、ウェールズからのボランティアに引き渡された。



服のチカラを、社会のチカラに。



衣料支援の実績:81の国や地域に5,897万点(2024年8月現在までの累計)


ユニクロは、人々の生活を支える「衣」を担う企業として、「服のチカラ」を最大限に活用していきます。服を本当に必要とする人たちへ届けるために、お客さまがもう着なくなった服を回収し、世界中の難民・国内避難民のほか、店舗を展開する国や地域において、社会的に弱い立場にある方々へ寄贈を続けています。


世界には、故郷を去ることを余儀なくされた1億人を超える人々がいます。
もはや遠い国の遠い出来事ではありません。

ナッケン鯉都(りつ)さん
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所首席副代表



国際基督教大学(ICU)を卒業後、NGO勤務を経て、ニュースクール大学大学院で非営利団体の経営を専攻、修士号を取得。その後、フィジー、イタリア、エチオピア、ベトナム、スリランカなどの国連機関に20年以上勤務。2021年より現職(2022年6月現在)。



世界ではいま、紛争や迫害などにより、1億人以上もの人々が故郷を去ることを余儀なくされています。この10年、20年のあいだ、加速度的に難民の数が増えつづけていて、残念ながら収束に向かうどころか、現状はさらに厳しいものになっています。
なぜ増えているのかは、個々のケースを見ると理由はさまざまですが、大きな視野でとらえると、アフガニスタン、シリア、エチオピア、ベネズエラといった国の人々が何年にも渡って苦難に直面していること、こうした人々の抱えるニーズがいまも増えつづけていることに加えて、気候変動による影響が、事態をより困難なものにしている、といった側面が見えてきます。
もうひとつには、「平和」や「人権」といった普遍的であるはずの価値が、当たり前の前提とならない社会が世界で広がりつつあるのではないか─その結果、避難を強いられた人々、特に女性や子どもなど弱い立場にある人たちに関わる危機感が、これまでになく高まっています。
こうしたさまざまな要因が世界を不安定にし、難民問題を複雑化、長期化させています。国際社会による国境を越えた対応も追いつかず、結果として難民・避難民の数が増えつづけている─これが私たちのいま直面している、厳しい現実だと思います。


地域社会、企業、個人の重要性



それぞれの国が国家として難民問題に取り組むことはもちろん重要です。しかし、それだけではとても、恒久的な解決に向けて進まないのが難民問題の手ごわいところです。避難を強いられた人々が、生まれ故郷ではない土地で暮らしてゆくためには、地域社会や企業、そこで暮らす人の理解と協力が欠かせません。避難した人々が地域社会に受け入れられていると感じ、実際に地域の一員となることが必要なのです。
UNHCRの重要な役割のひとつは、難民支援の骨格づくり、コーディネーションです。まずは人員をすみやかに現地に派遣し、緊急のシェルターや受付センターを設営します。そして、一時的な宿泊所と、生活必需品を含む救援物資を提供します。また、医薬品や食料、家賃、服など生活必需品の購入を支援するための現金給付も行っています。

現地での活動には、地域に根づいたNGOやボランティアの方々の知恵や経験が欠かせません。UNHCRは140以上もの人道支援組織と連携して活動を進めています。
人身売買や性的搾取のリスクについての注意喚起も重要な仕事です。パートナー団体との協働で、紛争によるトラウマを抱えていたり暴力を受けたりした子どものカウンセリングや、授乳を行いたい方へのスペースの提供、障がいのある子どもについての相談など、さまざまなケースに対応する態勢をつくっています。


遠い国で起こっている遠い出来事ではない



さまざまな企業が、衣料、家具などの支援物資を提供しています。ウクライナ危機において、ユニクロからは防寒性の高い服や寝具の速やかな提供により、厳冬期をしのぐ初期対応のかなめを担っていただきました。同時に11億円あまりの寄付に加え、継続してお客さまからの寄付を募るプロジェクトも構築してくださり、絶えることなく支援をいただいています。難民支援のニーズは刻々と変化するため、持続的で柔軟な支援には寄付が大きな原動力となります。
ウクライナ危機では、難民問題への関心がかつてない高まりを見せています。これをきっかけに、ウクライナのみならず世界各地で起こっている難民問題に、より多くの方が関心を持ち、難民支援の輪に加わってくださればと願っています。難民問題はもはや、遠い国で起こっている遠い出来事ではないのです。避難民となってしまった人々を支援する方法を、皆で見つけていかなくてはなりません。


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