MakingaThirdWave

  • Photography by Yoshio Kato (this image and products)
  • Editing & Text by UNIQLO

ニーズは時代とともに移り変わる。
快適さか、美しさか。長らく対立してきたこの2つを共存させ、胸を締め付けから解放することで新たな時代を開いたワイヤレスブラ。
外からは見えないけれど、実は絶え間なく進化を続けるこのカップの内側に迫る。

七夕になると、笹に飾り付けられる網飾り。平面である紙にスリットが交互に入れられることで立体的に丸みを帯びながら伸縮するようになる。

ニーズは時代とともに移り変わる。
快適さか、美しさか。長らく対立してきたこの2つを共存させ、胸を締め付けから解放することで新たな時代を開いたワイヤレスブラ。
外からは見えないけれど、実は絶え間なく進化を続けるこのカップの内側に迫る。

七夕になると、笹に飾り付けられる網飾り。平面である紙にスリットが交互に入れられることで立体的に丸みを帯びながら伸縮するようになる。

ひらめきは意外なものから

ブラカップの金型を作り出すために、3Dスキャナーで胸の曲線の形をデータ化する。

大きな発見は、意外なものの中に隠れていることがある。現代社会になくてはならないWi-FiやBluetoothに採用されている通信技術は、あるハリウッドスターが一見なんの関係もない自動ピアノの仕組みから発明したというし、ドイツの主婦は子どもが使っていたノートのインク吸取紙から100年後も世界で愛用されるコーヒーフィルターを思いついた。何気なく使っているユニクロのブラジャーの中にも、そんなひらめきが詰まっている。

窮屈ながら胸を立体的に下支えするために必要不可欠と言われていたワイヤーを大胆に省き、線の構造からカップ全体で支える面の構造へ変革したワイヤレスブラ。しかし快適さだけを追い求めても、ホールド力や立体的な美しさが伴わなければデイリーユースはできない。そこで重要になってくるのが内蔵されるカップだ。日々変わっていく体型や、一人ひとり違う胸の大きさに対応し、いつ何時も苦しみを感じない上に納得のいくシルエットを保つにはどうすればいいのか。思いがけず開発チームがたどり着いたのは、毎年夏になると日本の街中で見かける紙でできた七夕の網飾りに使われる構造だった。四角い紙を対角線上に数回折り合わせていき、横から浅く交互に切り込みを入れる。重なった部分をゆっくりとほどき先端をつまみ上げれば、紙は写真のようにふわりと丸みを帯びて広がっていく。漁網がモチーフだったという七夕の網飾りは、転じて「幸せをすくい上げる」という願いが込められているのだそうだ。網が膨らむかのように、接する面が胸の形にフィットしながら伸縮すれば、体調ごとに変化する胸のボリュームすらもうまくサポートできるかもしれない。伸び縮みするカップ。答えはそこにあった。

10年前の発売当初はリラックス用として捉えられていたワイヤレスブラだが、2016年、継ぎ目のないモールド構造で立体的に胸を支える“3Dホールド”(当時の名称はビューティーライト)の登場で一転、外出の際もデイリーで使えるメインの下着として認められ始め、爆発的な反響を巻き起こした。ブラの世界に美しさも快適さもあきらめない第3の道を示す「サードウェーブブラ 」というカテゴリーを切り拓き、さらに2019年には網飾りの構造を搭載したカップの誕生で機能性をさらにアップさせた。

しかし、ひらめきだけではプロダクトは完成しない。製品化に必要だったのは、アルチザンとしての細微へのこだわりと、最新テクノロジーの融合だった。ブラの核となるインジェクションカップの製造には、提携する世界最大級の下着製造メーカーの技術協力も不可欠。工場内ではリズムよくプシュッと空気の抜けるような音が繰り返し響き、縫い目のない3Dホールドのパーツが特殊なボンディング技術で繋がれていく。複雑で緻密な作業に影響を与えないよう温度変化や建物の揺れも厳密に管理された別のラインでは、直方体のアルミの塊が約20時間かけカップの曲線に合わせて金型として削り出される。この金型に機械のアームが次々とウレタン樹脂を注入し立体的なカップの形になっていく過程は、より軽くて強い部品を作り上げるために自動車の開発で使われる成形技術を転用することでなし得たという。

ブラカップの金型を作り出すために、3Dスキャナーで胸の曲線の形をデータ化する。

伸縮カップの構想から約1年、11カ国に渡り様々な体型の人々へのフィッティングを経た3Dホールドはシンプルな見た目こそ変化を感じさせないものの中身はフルモデルチェンジを遂げた。網飾りをつまみあげた時に立体を形作るかのごとく胸の膨らみに沿って伸び、容積を変化させるカップが1サイズで約3カップ分のボリューム差に自在に対応。バージスラインの樹脂は高いホールド力を保ちながらも、カップ上辺を波のようにカットすることで生地に余裕が生まれ、スムーズな肌への密着感を実現した。

シンプルで機能的。飾りたてることも不自然に作り上げることもなく、より快適に、一人ひとりの体型に寄り添うことで全ての生活シーンにフィットするブラ。10年に及ぶ技術革新を続けてもなかなかなし得ない困難な命題でありながら、ワイヤレスブラは常にそのテーマへ向き合い続ける。それは根幹に、この1枚が生活のベースを支える“LifeWear”であるという思いがあるからだ。声が届くたびに素材を吟味し、パターンのサイズをミリ単位で補正しながら、次のシーズンも小さな進化を続けていく。

厳しい品質基準をクリアした直方体のアルミ板は、事前に3Dスキャンされた金型のデータを基にカップの形を忠実に再現していく。

並べられた金型に機械のアームが次々とウレタン樹脂を注入。一定の温度に管理され、樹脂が発泡しながらカップの形になっていく。

Wireless Bra 3D Hold

アンダーはしっかり支えつつ、伸縮するカップがあらゆる胸に心地よくフィット。縫い目のないモールド構造で、アウターにも響きにくい。

ワイヤレスブラが製造される工場の内部。金型を削りだす作業が機械によって静かに進む。

カップの図面はCAD・CAMシステムで製作。動きやボリュームによってどのように形が変化するかなどを計算し、カップは各サイズごとに放射状の切り込みの数と位置、素材の密度も変えられている。

2019年発売モデルから新採用されたインジェクションカップ。20種類以上の切れ込み形状を紙で再現した結果、網飾りのように同心円状の切れ込みを上下にずらしながら交互に入れると、奥行きを持って膨らむことが分かった。

より美しく、快適に

ナチュラルも好きだけど、サポート力とメイク力を高めたブラも欲しい。そんな声に押されて2021年、ワイヤレスブラに新たなラインナップが登場する。

1日の予定を気にせずどんなシーンでも対応できる3Dホールドの他に、部屋でゆったりしたい気分の時にも優しくまとえるリラッス、スポーツ時の揺れも快適にサポートするアクティブタイプなど、用途や好みに応じて種類も揃えられてきたが、この春新たに加わった「シェイプリフト」は3Dホールドが開いたサードウェーブの流れをさらに跳進させたものだ。

柔らかな肌触りとワイヤレスの心地よさはそのままに、これまでの膨らみながら面で胸を支える構造から、カップの端と端を結ぶ弾性のあるゴムのような素材をクロスさせてバストの重みを下支えし、さらに吊り橋のようにトップを引き上げる導線を作り出す構造を開発。形作る力は、ワイヤ構造のブラにも引けを取らない。動くうちに胸が横に流れて気になってしまうという悩みを解決し、「気分が上がる」と好評だったレースのデザインを全体に採用。目指したのは作り込まれたセクシーさや、モデルのような体型に自分を当てはめるのではなく、一人ひとりが求める美しさをより納得して形作ることができる下着だ。

19世紀の終わり、鉄鋼や鯨ひげを使って体を縛り上げ曲線を作り出していたコルセットへの抵抗から、内臓を締め付けずに胸のシルエットをデザインする軽量のサポーターとして誕生したブラジャー。ウエストがより細く、胸が豊かに見えることが美しいとされた時代、健康を犠牲にしていたコルセットからの解放は女性を自由にした。時代は流れ、1950年代にはマリリン・モンローのような映画スターに近づくためのバストの形が、90年代には胸の谷間を強調するようなボディコンシャスなスタイルのモデルたちが憧れの対象へと移り変わった。でも今はそうした画一的な「美の基準」は覆り、多様化している。そして美しさのために身体を犠牲にしない、ヘルシーな生き方を求める声も高まった。肌に一番近い服であるからこそ、快適でありたい。セクシーでもナチュラルでも、自分の好きなように表現したい。シェイプリフトは、多くのユーザーから寄せられたそんな新たな時代のニーズを映し出している。

シェイプリフトの内部構造。プラスチックとゴムの中間のような特殊な素材がカップを立体的にしている。

シェイプリフトがどのように胸の形を整え、体にフィットするかをボディスキャニングマシンで計測。脇に胸が流れず、トップが引き上げられてより中心にボリュームが寄るすっきりとしたシルエットを実現した。

Wireless Bra Shape Lift

サイズは3Dホールドよりも細分化され、2カップ毎の展開に。シックな黒、ネイビーのほか、穏やかな色味のライトグリーンやピンク、オフホワイトの5色がある。

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