The Art and
Science of
WHOLEGARMENT

Photography by Gottingham Styling by Yumeno Ogawa
Hair & Makeup by Momiji Saito Editing and Text by Kyosuke Nitta

縫い目のないニットを編み上げる世界初の技術を持った無縫製横編機、ホールガーメント。

新たな技術を開発し続ける島精機製作所と、ユニクロが追い求める美しいシルエットを実現した3Dニットの未来を求めて、イノベーションが生まれる現場を訪ねた。

縦におちる緩やかなシルエットが美しい、コットン素材の3Dニットドレス。ホールガーメントの立体的な製法を活かしたボリュームスリーブのデザインが特徴。首元から肩にかけて身体に沿うように優しくフィットする。

W's 3D Knit Cotton Balloon Long Sleeve Dress (Regular) ¥4,990

デザインポイントにもなるリブを段階的に調整することで、身体のラインに自然にフィットする3Dシルエットを実現。同素材のフレアスカートとセットアップとして着用が可能。

W's 3D Knit Extra Fine Merino Ribbed Boat Neck Long Sleeve Sweater ¥3,990
W's 3D Knit Extra Fine Merino Ribbed Flare Skirt ¥4,990
W's Stretch Cotton Turtleneck Long Sleeve T-shirt ¥1,000

Limitless Possibilities

無制限な可能性

「ユニバーサル・スペース」。これは、近代建築の巨匠として知られるミース・ファン・デル・ローエが提唱した理念だ。しばしば“均質空間”と訳され、床と天井、柱と壁という無駄のないミニマムな構造と、空間の用途を限定しない斬新なスタイルは、後に丹下健三の代表作である旧東京都庁舎の設計にも大きな影響を与えた。

和歌山県に本社を構える島精機製作所が1995年に世界で初めて開発に成功した無縫製横編機とそのニットウエア、ホールガーメントは、ミースの「ユニバーサル・スペース」を体現していると言っても過言ではない。そもそも、従来のニット商品の製造方法は、前身頃と後ろ身頃、両袖、襟の5パーツをそれぞれ別々に作ってから最後に縫い繋げるのに対し、2015年から稼働している最新のホールガーメント機「MACH2XS」は、デザインシステムに入力した編成プログラムをもとに機械が糸を螺旋のように編み込み、全自動で一着まるごとを完成させる。セットしてものの数十分でニットができあがるのを実際目の当たりにすると、あまりの効率の良さとスピード感に目を丸くしてしまうが、それだけが魅力かというとごく一部でしかない。筒状に編むため各パーツ同士の縫い代がなくなる。そうなることで、どの角度から見ても美しい上品なドレープが生まれ、仕上がりが軽やかになるだけでなく、縫い合わせないからほころぶ心配もない。そして、熟練の手仕事でしか成し得なかったプロセスをすべてオートメーション化したことによって、年々深刻化している職人不足の解消にも繋がったのだ。さらに、「APEX 4」という自社開発したデザインシステムと連結させると選択肢は無限大に広がり、編むことができるのは、手編み風の3ゲージから超高密度の20ゲージまで。最新ソフトウエアに入っている基本ベース柄はなんと300万パターン。それらを組み合わせることによって桁違いのデザインが表現できるのだ。ミースの「ユニバーサル・スペース」のように使い道は無制限で、デザインデータとマシンと糸さえあれば世界中どこにいても同じものが作れるため、国も場所も不問。医療や工学。分野もボーダーレス。身体の部位に合わせて編み率をアレンジしてフィット具合も細かく調節できるため、近年ではスニーカーのアッパー製造にも役立てられ、微小重力の宇宙空間で起こる体型と姿勢の変化にもストレスなくフィットすることから、2008年には宇宙船内用日常服にも採用された。ホールガーメントはまさにユニバーサルなスケールで可能性を秘めているのである。

和歌山のイノベーションファクトリーにずらりと並ぶホールガーメント機「MACH2XS」。

届いた原料はすべてワインダー機へ。糸の太さにムラがないか、雑物は付着していないかなどをセンサーで検出して欠点を除去する。

ホールガーメント機で編んだニットの検品工程。一着一着ダメージなどの不具合がないかを確認する。

神は細部に宿る

近未来的、革新的という言葉では表現し尽くせないホールガーメント機。そのルーツが、手袋だったと聞けば誰もが驚くだろう。島精機製作所の創業者、島正博氏が全自動手袋編機を開発したのが1964年。そこから、手袋の真ん中3本の指を合わせ、指を下に向けると親指と小指が袖となり、洋服に見える、という柔軟、かつユニークなアイデアを出発点にしてトライ&エラーをひたすら重ね、1995年に世界初の完全無縫製型コンピュータ横編機(SWG)を発表し「東洋のマジック」と賞賛された。それから25年。のどかな和歌山県からマシンは海を渡り、幅広いフィールドで活用されている。「ホールガーメントがいつか世界のスタンダードになるとずっと信じ続けていた」というから、ロマンを感じずにはいられない。

その自由な発想力とポテンシャルにユニクロが惚れ込んだのが2015年のこと。「服の製造でイノベーションを起こそう」と島精機製作所との合弁会社「INNOVATION FACTORY」を設立し、当時のUniqlo and Lemaireで3Dニットのファーストモデルを発表したのを皮切りに、今や定番となったウィメンズのコクーンニットをはじめ、新商品を毎シーズン展開してきた。今季は限定コレクションを含めると全24型がリリースされる。工場を訪れると、カシャン、シャーという音を軽快に刻む機械の下から、新作のプルオーバーニットが姿を現していた。ただ、全自動だからといって、高水準のクオリティを数十万着レベルでキープできるのかというと難しいだろう。目落ちと呼ばれる穴やキズ、些細な汚れを見逃さないシビアな検品体制と、梱包・発送までのスムーズな導線の確保。風合いを調整する洗い加工では縮率をミリ単位で管理するスタッフがいて、ホールガーメント機の側には常に細かくチェックする技術者の姿がある。スチームの掛け方、畳み方にまで厳しいルールがあり、工場内の後仕上げセクションにはピリッとした緊張感が終始漂っていた。ミースが提言した言葉「God is in the details」を借りるならば、妥協なき作り手の思いがあってこそ神が細部に宿るのである。

最初の検品を終えると洗い加工が施される。風合いの微調整はここで行われる。

サイズ別の型枠も自社で開発。スチームの温度や当てる時間なども細かく決まっている。

WHOLEGARMENTは株式会社島精機製作所の登録商標です。

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