Recycling Journey

Photography by Kazufumi Shimoyashiki, Yoshio Kato (shirts)
Self styling by Fumiko Aoyagi
Hair & Makeup by Haruka Morishita Editing & Text by Kyosuke Nitta

今年から東レとの協業でスタートした、リサイクルダウンとペットボトル原料によるドライEX。
サステナブルな未来のためにできることとは何か?
再生服が生まれる舞台裏を巡る。

Keeping the Clothes We Make
from Ending up in Landfills
自らが製造した服を、ゴミにしないという責任

「サーキュラーエコノミー」を知っているだろうか?
EUで広がっている新しい経済モデルのことで、環境に配慮して資源を循環利用し、ゴミを減らしてCO2排出を削減しようというもの。そうした潮流のなか、ユニクロがサステナブルな未来のためにできることを考えて生まれたのが、この秋登場するリサイクルダウンである。
使わなくなった羽毛布団から羽毛のみを取り出して再利用するのが従来の一般的なリサイクルだが、ユニクロはアプローチが大きく異なる。役目を終えた自社のダウンジャケットを回収してダウンのみを取り出し、またダウンジャケットへと戻すのだ。それを少量ではなく数万着の規模で行うのは歴史上初めての試みだろう。商品化までにかかった期間は約6年。ウルトラライトダウンを協業で開発した先端素材メーカーの東レと2014年から再生羽毛の検証が始まり、2017年末から本格的にプロジェクトが動き出した。

全国のユニクロ店舗で回収されたダウン製品は、滋賀県にある東レの瀬田工場へと運ばれる。段ボール1 箱に入っているのは約25着。巨大な倉庫に数えきれないほど積まれていて、その8割近くがウルトラライトダウンだという。到着すると、スタッフがポケットの内容物を1 点1 点細かくチェックした後に、金属探知機に通して、異物が入っていないかをさらに検査する。

とはいえ、前例がないだけに課題は山積みだった。大きくは2つ。まず1つは、本当に回収できるかどうかだ。ユニクロは2006年から難民への衣料支援などをワールドワイドで行っているため、世界中の店舗に回収ボックスがすでにあり、そのシステムを活用すれば手順はスムーズだが、そうは言っても、使用済みの服を提供していただけるかどうかは蓋を開けるまで誰もわからないし、成功する確証は持てない。それでも、ビジネス度外視で未来への投資のためだと可能性に賭け、昨年9月から日本の店舗で大々的に告知を続けた。その甲斐もあって、2020年2月末までの回収数はなんと約62万着。全国から続々とダウンジャケットが届いたのである。

東レとユニクロが見据える、サステナブルな未来

回収の問題とは別に、越えなければならない大きな壁がもう1つ。できあがった製品からどのようにして効率よくダウンを取り出すかである。カットするだけの羽毛布団とは異なり、例えば、ウルトラライトダウンは、極薄のナイロン素材、縫製糸、樹脂のファスナー、金属製のジッププル、製品タグなどが複雑に組み合わさった複合物で、ダウンを包んでいるキルトも単純ではない。手作業でバラす以外に方法がないのではという声も挙がったが、非効率的なだけでなく、生地をカットした瞬間に舞うダウンの吸引を防ぐためのマスクやメガネが不可欠で、労働環境も著しく悪くなる。となればゼロから作るしかないと、東レの生産装置を製造するエンジニアリング開発センターが指揮を執り、最短、最適、最大限にダウンを取り出すオートメーション機の設計が2018年からスタートした。

全国のユニクロ店舗で回収されたダウン製品は、滋賀県にある東レの瀬田工場へと運ばれる。段ボール1 箱に入っているのは約25着。巨大な倉庫に数えきれないほど積まれていて、その8割近くがウルトラライトダウンだという。到着すると、スタッフがポケットの内容物を1 点1 点細かくチェックした後に、金属探知機に通して、異物が入っていないかをさらに検査する。

それから2年。最終テストを合格した実機が稼働を始めると聞いて滋賀にある東レの瀬田工場を訪れると、完成したばかりのダウンリサイクルマシンがガシャン、ガシャンという機械音を響き渡らせていた。その工程を見て誰もが驚くのは、切って混ぜるという単純明快な構造だろう。ベルトコンベアにセットして短冊状に切り刻み、攪拌器で混ぜながら、上下に風を当ててダウンとその他に振り分けられる。取り出しが完了するまでわずか2分弱。シンプルさゆえに本質的なスゴさがわかりにくいが、硬度が極端に違う素材を裁断するカッターには、トレカ(炭素繊維)の技術が採用されていたり、ダウンをロスなく抽出するために最適な攪拌スピードや風の流れが導き出されていたりと、目に見えない細部に東レが培ってきた高い技術力が息づいているのだ。そこから圧縮されたダウンは洗浄工場で洗いにかけられ、軽さと暖かさを示すフィルパワーもオリジナルと遜色ないレベルまで復元。また製品へと姿を変えるのである。

そのファーストモデルが、Uniqlo Uからいよいよリリースされる。キルティングの中に入っているダウンの元を辿ると、過去に誰かが愛用していたダウン商品に辿り着くって考えたら感慨深い。服から服へ。小さなアクションが、明日の服に繋がっていくのだ。

ベルトコンベアにウルトラライトダウンをセット。効率よく裁断できるように折り畳み、腕と腕を重ね合わせる。
裁断機を通過するだけで切り刻まれ、瞬く間に角切りの状態になる。ここまでの所要時間は30秒。
裁断した後は空中に羽毛が舞ってしまうため、ベルトコンベアは視認性の高い透明のカバーでしっかり覆われる。
How Down Recycling Machine Works
大きな攪拌器の中で混ぜ、複雑な空気を当てながらダウンを上に、それ以外の生地やパーツを下に分離する。
ナイロンやファスナー、ジッププルなどが、見事に分離。生地に付着するダウンを減らすのが難題だったという。
分別したダウンは汚れやヘタリがあると思いきや、生地に包まれていたのできれい。ここから再度洗浄される。

軍用コートのライナーを連想させる波型のキルティングと袖口の厚いリブが特徴的なUniqlo Uのリサイクルダウンジャケット。ユニセックス仕様で、XS~XXLのサイズ展開。今秋発売予定。

Recycled Down Jacket ¥7,990 (Uniqlo U)
W's Corduroy Stand Collar Long Sleeve Dress ¥4,990 (Uniqlo U)
W's Side Gore Short Boots ¥3,990

Fumiko Aoyagi 青柳 文子

東京都生まれ。モデル・女優。ユニクロの着こなし発見アプリ「StyleHint」でのセンスあふれる着こなしも注目を集める。はじめて触れるダウンリサイクルの現場に終始、興味津々だった青柳さん。実際に着用してみた感想は「少しオーバーサイズで着るのがしっくりきます」。

Recycling
Journey

再生ポリエステルのウエアを着た選手たちが
今年からコートで躍動する。
錦織圭選手のモデルは
2Lの回収ペットボトル約5本が原料。

LifeWear is Stepping Up its Game
with Recycled Plastic
ペットボトルリサイクルで、LifeWearがやるべきこと

ついにこの日が来た。ユニクロのグローバルブランドアンバサダーを務めるテニスプレイヤー、ロジャー・フェデラー選手や錦織圭選手、国枝慎吾選手、ゴードン・リード選手と共同開発しているゲームウエアが、再生ポリエステルを使用したドライEXに2020年から大幅にリニューアル。原料は他でもない、回収ペットボトルである。それが意味することは、単に資源の有効活用ができたということだけではない。吸水速乾性、快適な肌ざわり、コートに映える発色の美しさなどすべてにおいて、世界のトップランカーたちがユニフォームに求める高いクオリティを、リサイクル繊維がクリアしたという証明である。フェデラー選手は1 月に開催された全豪オープンから着用し、「これまでのドライEXと比べても、機能性と着心地ともに変わらない」と自身の戦闘服に納得の表情を浮かべ、躍動感のある華麗なプレーで世界中を沸かせた。彼の言葉にもある、品質が変わらない再生ポリエステル。それを作ることこそが、ヒートテックやエアリズムなど、これまで画期的な機能素材を開発してきた東レとユニクロが、サステナブルな商品開発をスタートした2018年5月に掲げた目標だった。生地の質が劣れば結果的に売れ残り、環境負荷低減に貢献どころかマイナスにしかならない。だから、消費者が純粋に欲しいと思う服を作らなければ意味がないと両社で幾度も話し合いを重ねて約2年。ようやく商品化に辿り着いた。

高品質なくして、
サステナブルな循環は実現しない

ここ数年で、SDGs(持続可能な開発目標)に向かって消費者の環境意識も変わってきている。とはいっても、まだまだリサイクル製品に抱いているイメージは渋い。購買意欲にブレーキをかけていた要因は、リサイクル品を実際手にしたとしても製造の裏側が見えず、信用できるものかどうか分からないのが大きいだろう。それを解決するために、回収段階から紡糸工程まで、商品に使用される原料が回収ペットボトルかどうかを追跡できるシステムを1 年半かけて構築していった。最初に決めたのは、日本のペットボトルしか使わないということ。流通しているボトルの大半が透明であることに加え、ラベルとキャップを取る生活習慣と、飲み終わった後に洗う文化が暮らしに根付いていて、回収ペットボトルに異物が少ないのが理由だ。さらに、自治体や事業者によっても回収ペットボトルの状態が異なることから、調達先にこだわることで、純度の高い原料の確保に成功したのである。

そこから糸に仕上げるまでの複雑なプロセスは、ペットボトルリサイクルの分野で創業から35年分の広い知見と高い技術を持つ協栄産業とタッグを組み、製造ラインを一本化。塩ビボトルや金属を確実に除去し、粉砕してフレーク状にした後、特殊なアルカリ洗浄と、異物を取り除く新たなフィルトレーション技術を採用した溶融工程によって、バージン原料と同等の白さを実現したのである。徹底的に異物混入を防いだことで、繊維をより細くすることも、特殊な断面に加工することも可能になり、トップアスリートたちのいかなる要望にも柔軟に応えられるようになったのだ。

もし作り手が妥協すれば、衣類に姿を変えたペットボトルが地球に滞留してしまうだけで、何の解決にもならない。長く着たいと思ってもらう価値を加え、信頼できる高品質を循環させる。それこそが、未来に求められるサステナブルのかたちである。

回収ペットボトルが
ドライEXのポロシャツになるまで
From PET Bottle to DRY-EX Polo Shirt

Start!
自治体や事業者から回収した使用済みペットボトル。立方体状に圧縮梱包した「ベール」と呼ばれる塊となってプラスチックリサイクルを専門にする協栄産業の工場へと搬入される。
ベールをバラした状態。ラベルやキャップがきれいに除かれ、汚れも少なくクリア。ペットボトルをきれいにリサイクルしようという日本の消費者の高い意識が見てとれる。
選別・粉砕・洗浄を経てフレークに。アルカリ洗浄を施した再生ペットフレークが写真左。一般的な洗浄方法のもの(同右)と比べると、いかに白度に優れているかが分かる。
フレークを高温で溶融。東レと協栄産業が独自開発したフィルトレーション技術により、異物が徹底的に除去される。紐状に押し出された樹脂は水で冷却される。
冷却により固化した紐状の樹脂をカッターで細かく裁断し、ペレットと呼ばれる粒状にする。運搬や貯蔵がしやすくなり、繊維加工するときの取り扱いが容易になる。
ペレットの品質は専用のライトボックスで光を当てながらチェック。変色や不純物の有無を検査し、規格内のもののみが繊維原料として使用される。
協栄産業から東レの製糸工場へ。ペレットを熱して溶かし、小さな穴から押し出すことで繊維にする。
繊維をドラムに巻き取る。白度に優れるフレークからペレットを作り、それを使用することで繊維も白度に優れたものが得られる。
巻き取った繊維。ペレットは一連の流れでこの状態に仕上げられる。まだ中間製品のため、次の加工工程で衣料用に可能な物性をもたせる。
熱延伸機で熱をかけて繊維を1.5~2.5倍に引き伸ばす。リサイクルポリエステルへの異物混入を防ぐことで、細い繊維をつくることが可能となる。
ボビンに巻き取る。この段階で、衣料に使用できる繊維になる。できあがった繊維は、製糸工場から出荷され、織り編み、染色、縫製工程を経て衣類になる。
2020年春夏から店頭に並んでいるドライEXのポロシャツ。リサイクルペットボトルの繊維の白度が高いため、染められたブルーやグレーの発色もまた抜群に美しい。
Finish!

※商品やカラーによって、再生ポリエステルの使用率が異なります。

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