PEOPLE
and LifeWear

  • Photography by Kazufumi Shimoyashiki
  • Text by Keisuke Kagiwada
  • Special thanks to Natsuki Akiyama

豊かな自然をたたえ、ものをつくる。魅力的な2人の作家の暮らし。

Craftman_2

Ken Fujimoto

藤本 健

Woodworker | 木工作家

1971年、愛知県生まれ。上京後、20代半ばから家具職人として木工業界に入る。2002年、東京生活を経て、沖縄移住。家具や製品をオーダーで制作する。2011年、木工旋盤を使い器を作り始める。以後、個展などを中心に活動。
http://www.yakabu123.com/k/

国際通りから車で走ること30分、眼下に海を望む国道331号線を少し内陸に入ると、雄大なサトウキビ畑を擁する南城市玉城(たまぐすく)が広がる。この自然豊かなエリアに住居兼工房を構えるのが、ガジュマルやアカギをはじめ沖縄の木材で器を作る木工作家の藤本健さんだ。愛知県に生まれ、東京で家具職人をしていた藤本さんが、沖縄に移住したのは今からおよそ20年前のこと。きっかけは、奥さんの転勤だったという。

「沖縄に個人的なゆかりはまったくないんです。だけど、石垣島によく旅行で訪れるくらいには好きだったので、妻の転勤の話が出たときは、何も考えずに『行こう』と言いました(笑)。当時は沖縄の木を扱う木工作家になるなんて思ってもいませんでしたね。実際、移住して10年程度はオーダー家具職人をしていましたから」

最初は中央部に住んでいたという藤本さんたちが、このエリアに土地を購入したのは12年前。現在暮らす木造の素敵な家や工房は、藤本さん自らが設計・建築したというから驚いた。いくら家具職人といえども、家を建てるとなると話が違うのではないか?

「家具のほうがルールは細かいんですよ。隙間があったらいけないとか、歪みやねじれがあったらいけないとか。その点、建築はもう少しルーズ。多少の隙間なら、上から何かで隠せば済むので(笑)」

この自由なものづくりの経験が、木工作家転身への後押しとなったようだ。しかし、より直接的な足がかりとなったのは、時を同じくして、かねて興味を持っていた木工ろくろの機材を入手したことだという。

「家具作りではろくろを使うことがないので、それまで触ったことはなかったんです。だけど、やっていくうちにどんどん楽しくなってしまって。始めてから1年半くらいはオーダー家具とろくろを並行でやって、最終的に後者だけが残った感じです。沖縄では家具用の木材がなかなか手に入らなくて、それがストレスになっていた時期でもあったんですが、家具はお客さんと打ち合わせをして、設計図を引いて……と作るまでにとにかく時間がかかるんですよ。だけど、今僕が作っている器は削りながら形を考えて一気に仕上げてしまう。そのスピード感が自分の性格に合っていたということなんでしょうね」

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かくして、木工作家の道を歩み始めた藤本さんだったが、最初から沖縄の木を使うことをコンセプトにしていたわけではないそうだ。どういうことだろうか。

「木材屋に行くと、基本的には製材された板が扱われているのですが、それでは厚さ的に薄いお皿しかできません。もっと深さのある器を作ろうと思えば、丸太のような木の塊が必要になるわけです。だけど、本州からそういう材料を送ってもらおうとすると、材料費が高くなりすぎてしまう。そこで手に入れやすい沖縄の木を使うようになったんです。その意味では、 “成り行き”なんですが、いざ使ってみると、個性が強くて面白くて。ガジュマルは木目や全体の質感、アカギは色や歪み方が特徴的だったり。そもそも僕が使っているのは雑木で、これは伐採されたけど商品になる過程で見捨てられた木。要するに、職人が使わない木なので、これまで誰も目にしたことがなかった表情が見えるというのもあるんですけど」

すべて生木から作られ、歪みや割れ目など通常の工業製品では“欠点”とされる木の性質をも美しさに昇華した藤本さんの器は、唯一無二の野性的な存在感を誇る。そこにもまた、“成り行き”を作家性に変える藤本さんならではの考えがあるようだ。

「ヨーロッパやアメリカでは生木を使うこともあるんですが、日本で木工と言うと、漆塗りの器なんかもそうですけど、乾燥させた木を使うことが多いんですね。そのメリットは、安定して同じ形のものを作れること。乾かす過程で変形したりしないので。だけど、僕の場合、どうしてもこの形を作りたいというのがあらかじめ決まってないんですよ。それぞれの木と対話して削りながら、どういう形にするかを考えるのが楽しいので。だから、生木を使うんです」

「芸術家は自然の親友である。草花は茎の優美な曲線と花びらの調和のとれた色合いで芸術と対話をする。どの花にも、自然が芸術家に心から語りかける言葉があるのだ」と語ったのは、「考える人」で知られる彫刻家オーギュスト・ロダンだが、藤本さんはまさに「自然の親友」として、ひとつひとつの木の語りかけてくる言葉に呼応しながら、器を作っているというわけだ。

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1. 木工ろくろで木材を削る藤本さん。ひとつの作品を削り終えるのにかかる時間はものの数十分。2. 作業着として愛用しているというユニクロのチノパン。定期的に買ってはき倒してはまた買って、を繰り返しているそう。

かくして、木工作家の道を歩み始めた藤本さんだったが、最初から沖縄の木を使うことをコンセプトにしていたわけではないそうだ。どういうことだろうか。

「木材屋に行くと、基本的には製材された板が扱われているのですが、それでは厚さ的に薄いお皿しかできません。もっと深さのある器を作ろうと思えば、丸太のような木の塊が必要になるわけです。だけど、本州からそういう材料を送ってもらおうとすると、材料費が高くなりすぎてしまう。そこで手に入れやすい沖縄の木を使うようになったんです。その意味では、 “成り行き”なんですが、いざ使ってみると、個性が強くて面白くて。ガジュマルは木目や全体の質感、アカギは色や歪み方が特徴的だったり。そもそも僕が使っているのは雑木で、これは伐採されたけど商品になる過程で見捨てられた木。要するに、職人が使わない木なので、これまで誰も目にしたことがなかった表情が見えるというのもあるんですけど」

すべて生木から作られ、歪みや割れ目など通常の工業製品では“欠点”とされる木の性質をも美しさに昇華した藤本さんの器は、唯一無二の野性的な存在感を誇る。そこにもまた、“成り行き”を作家性に変える藤本さんならではの考えがあるようだ。

「ヨーロッパやアメリカでは生木を使うこともあるんですが、日本で木工と言うと、漆塗りの器なんかもそうですけど、乾燥させた木を使うことが多いんですね。そのメリットは、安定して同じ形のものを作れること。乾かす過程で変形したりしないので。だけど、僕の場合、どうしてもこの形を作りたいというのがあらかじめ決まってないんですよ。それぞれの木と対話して削りながら、どういう形にするかを考えるのが楽しいので。だから、生木を使うんです」

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3. 藤本さんの作品群。右下のグレーのものは独自の方法で漆を用いた「錆漆」シリーズ。¥5,500〜 4. 作品は基本的に売ってしまうという藤本さん。しかし、このガジュマルの木の器はさまざまな縁から手元に残っている貴重な一品。

「芸術家は自然の親友である。草花は茎の優美な曲線と花びらの調和のとれた色合いで芸術と対話をする。どの花にも、自然が芸術家に心から語りかける言葉があるのだ」と語ったのは、「考える人」で知られる彫刻家オーギュスト・ロダンだが、藤本さんはまさに「自然の親友」として、ひとつひとつの木の語りかけてくる言葉に呼応しながら、器を作っているというわけだ。

「例えば、アカギは削ったあとに強く変形が出ます。あるいは、削っていくうちに穴が開いていると気づく木材もある。その偶然を前向きに捉えるというか、自分でコントロールしすぎず仕上げるようには心がけています。その辺は決まりごとが多い家具とは全然違いますね。そうやってルールにとらわれない自由なものづくりをできるようになったのは、沖縄で暮らしていることが多少影響しているかもしれません。沖縄に来たこともそうだし、木工作家になったのもそうだし、行き当たりばったりな人生ですよね(笑)」

「例えば、アカギは削ったあとに強く変形が出ます。あるいは、削っていくうちに穴が開いていると気づく木材もある。その偶然を前向きに捉えるというか、自分でコントロールしすぎず仕上げるようには心がけています。その辺は決まりごとが多い家具とは全然違いますね。そうやってルールにとらわれない自由なものづくりをできるようになったのは、沖縄で暮らしていることが多少影響しているかもしれません。沖縄に来たこともそうだし、木工作家になったのもそうだし、行き当たりばったりな人生ですよね(笑)」

ところで、近年の玉城は、藤本さん以外の作家の工房も点在する他、個性的なお店が密集するエリアとしても注目されている。実は藤本さん、このコミュニティの中心人物でもある。実際、アーティスティックなビストロ「料理 胃袋」やバナナ畑の中にある一棟貸しの宿「芭蕉の家」の建築を設計したのは藤本さんだし、周辺の作家たちの作品が手に入るレストラン「玉城食堂」を運営するのも藤本さんとその仲間たちだ。

「何かを仕掛けようとか、大それた思いがあるわけではないんです。『自分たちの住んでいるところが面白いところになったらいいよね』というくらいで。『玉城食堂』は、陶芸家や画家など僕を含む9人で結成した“タマトラ会”に、『使ってない公民館があるんだけど、面白いことやるからなんか使わんか?』という話が来て、1年間くらい打ち合わせして2021年にオープンしたんですが、“タマトラ会”はもともと1台の軽トラを共同所有している飲み仲間のグループですから(笑)。『料理 胃袋』も、知り合いの料理人から、新しい店を始めたいという話を聞いているうちに盛り上がって、『じゃあ、うちの隣を使えば』となって作っただけ。ただ、『玉城食堂』は役場の人もすごく喜んでくれているので、ここから行政とも絡んでこのエリアを盛り上げていけたらいいなと思っています」

工房の前の庭にて。のびのびと育った緑が広がる気持ちのいい空間だった。

What's Be.Okinawa?

2013年にスタートした沖縄県の観光ブランド。「Be」とは「そこにある、存在する」を表し、行動を促す言葉です。旅する人が沖縄の空気や風景に溶け込み、そこに暮らす人々と交流し、心を通わせること、そして訪れるすべての人にとって「美しい自然とあたたかい人たちに囲まれて、本来の自分を取り戻せる島」であることを表現しています。
https://beokinawa.jp/

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