FLOWERSand LIFE

  • Photography by Kazuharu Igarashi
  • Illustrations by Isabelle Boinot
  • Text by Kyosuke Nitta

The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc.

アンディ・ウォーホルの作品が、ハンカチに姿を変えて暮らしに咲いた。
ときにアートに、窓辺に、街に。生活に彩りを加える、花にまつわる3つのはなし。

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A Life Filled with Flowers

花のある生活

ハート形のケマンソウや、鐘のようなツリガネニンジン。赤、黄色、緑、薄紫。フォルムがかわいい色とりどりの花々が、庭に広がる陽だまりの風景を覗き込んでいるかのようでなんとも微笑ましい。

上の写真は、だまし絵とブルーラインの作風で世界的に知られるスウェーデンの陶芸家、マリアンヌ・ハルバーグさんが自宅の窓辺で撮影した1枚。野の花を摘んで自身の花器に生ける彼女の気取らないライフスタイルと、いかに花が身近で尊い存在なのかが伝わってくる。

「家が代々続く花屋で、新鮮な花を毎日持って帰ってくるのが父のルーティン。花のサイズや高さに適したフラワーベースを用意して、部屋のあちこちに飾るのが私の日課。ずっと花に囲まれた幼少期を送っていたので、今でも飾ることは特別なことではなく暮らしの一部なんです。美しくて香りもよく、穏やかな気分になって、人にも親切になる。季節の知らせを感じながら過ごせば、気持ちに余裕ができる。花がもたらしてくれる幸福感は計り知れないなぁとつくづく思います」

ルーツを聞けば、彼女の代表作の多くが花器であることも頷ける。その一方で、「香水瓶」(上写真) や「ウォーターボトル」など、暮らしにありふれたものをモチーフにしているのはなぜだろうか?

彼女のSNSに「Everyday Life」と投稿された自宅の一角。

「個性が強すぎる派手なデザインだと、どうしても気負ってしまうので、花を特別視せず気軽に楽しんでほしいという願いも込めて。あと、1,000年以上の歴史がある酸化コバルトを染料に使っているのも花の魅力を最大限引き出すため。青と白は過度な主張をせず、生活に溶け込んで、花の色を際立たせてくれる。そのうえシックで上品。洋服もそうでしょう? 悪目立ちせず、落ち着いた印象で控えめ。だからどんな色の花を挿しても大丈夫。ルールはありません」

実際自由に生けてみる。白磁に映える滲んだ手描きのゆるやかな線がチャーミングで、昔スケッチしていたような花の絵が現実のものになったと錯覚し、目に入るたびに自然と顔がほころぶ。

ちなみに、どんな花が好きですか? と尋ねたら、「プリムローズ、アネモネ、ピオニー、あと……」としばらく続いた花の話。工房があるヨーテボリは野の花がきれいだそうだ。「明日も摘みに行く」。そう無邪気に話す彼女の表情が、花のある生活の豊かさを物語っていた。

彼女のSNSに「Everyday Life」と投稿された自宅の一角。

Marianne Hallberg

Ceramic Artist

マリアンヌ・ハルバーグ/陶芸家

スウェーデン・ヨーテボリ生まれ。青春時代に世界を放浪した後、地元ヨーテボリに戻って作陶を開始。白磁に手描きされたコバルトのブルーラインと、平面的なラフスケッチが立ち上がったようなだまし絵の作風で人気。愛知県瀬戸市を産地とする伝統的な陶磁器、瀬戸焼とのコラボレーションを昨年リリースした。

PAPER FLOWERS

Handmade Flowers Tell a Story

物語になる手仕事の花

ジョナサン・アンダーソンが紙の花のブランド『PAPER EDEN』にひと目惚れし、花と手仕事をテーマにしたUNIQLO and JW ANDERSONの2021年春夏コレクション「Threads in bloom」で、店内装飾を担当した『edenworks』の篠崎恵美さん。花にまつわる様々なクリエイションを手掛けるなかで、なぜ紙という素材に着目したのだろうか? 聞くと、「母が花を捨てない人で、何でも手作りする人なんです」と照れながらもちょっと誇らしげに、ルーツであるお母さんの話をしてくれた。

「実家のリビングの壁一面には、いくつもの花束がドライフラワーになって飾られていて、当時高校生だった私は不思議に思っていました。どうして捨てないのか母に尋ねたら、『これはあなたの入学式。これは弟のスポーツ大会の優勝記念。これは3年前に母の日にもらったブーケ』と全部事細かに覚えていたんです。あと、母は紙で造花を作るのが趣味で。束ねるのも、切り貼りするのも、どちらも手仕事。そういう手の温かみがあって、捨てられないぐらい愛着が増していくものを届けたいという気持ちが、『PAPER EDEN』の根本にあるんです」

確かに、ディテールと素材感を見るほどにプロダクトではなくクラフトだ。紙の造花は珍しいものではないが、『PAPER EDEN』はリアル過ぎないのがいい。クールで凛とした奥ゆかしさがあり、“余白”がある。

「使用しているのは日本の和紙。岐阜や富山で受け継がれる伝統的な手漉き和紙や、手間と時間のかかる揉み紙など。型紙も手で描き、葉や花びらを貼り付ける工程も手作業。機械でやれば効率的かもしれませんが、平面的で味わいや深みが薄れてしまうので、花びらのニュアンスや茎の曲線の揺らぎもすべて手で行っています。あと、花のデザインを完璧にコピーしてしまうと、見る側に想像する隙間がなくなってしまうため、グラフィカルにデフォルメして単純化し、ファンシーなものにならないように作っています」

UNIQLO TOKYOに展示された紙の花。花びらの繊細なニュアンスが美しい。

紙のオブジェだからこそ自由度も高くなり、同時に、紙で花を作る意味が生まれると篠崎さんは言う。

「花屋は鮮度のピークが過ぎてしまったものを日々破棄しなければいけませんが、紙の花にはそもそも生死の概念がありません。また、生花の首が垂れているとネガティブな印象になりますが、紙のオブジェならそれはそれでいいと思える。とはいえ、生きていないから何でもいいというのではなく、命ある花を表現する以上、悲しい見え方にはしないようにと決めています。花は、もらうこと、あげることで幸せになるもの。母がそうだったように、人生の大切な物語になりうるものですから」

UNIQLO TOKYOに展示された紙の花。花びらの繊細なニュアンスが美しい。

Megumi Shinozaki

Flower Artist

篠崎 恵美/フラワーアーティスト

百貨店や店内装飾、雑誌や広告の小道具や美術など、花に関わるあらゆる創作を2009年にスタート。2015年にフラワーショップ「edenworks bedroom」を代々木上原にオープン。ドライフラワーショップ「EW.Pharmacy」をはじめ、「PLANT by edenworks」、「ew.note」をディレクションする。花を棄てず、次に繋げるという彼女の姿勢にファンが多い。

UNIQLO FLOWER

A Hallmark of a Good Town
is a Good Florist.

良い街には良い花屋さんがある

通いたい花屋ってどういう店だろう。条件を挙げればキリがないけど、ぱっと思いつくのは、誰でも気軽に入れて、元気な花がずらっと並んでいて、手に取りやすい価格で、ローカルに愛されている店だ。

「花と服には共通点があります。人々の生活に彩りを与え、より豊かにしてくれる。そして季節を感じられる。服を選ぶように、花を選んでほしい。さぁ、花のある生活をはじめよう」というステイトメントを掲げ、東京の旗艦店である『UNIQLO TOKYO』に昨年オープンした『UNIQLO FLOWER』が目指しているのは、まさに何度でも通いたくなるような街のフラワーショップである。そのためにも、男性でも気兼ねなく入れるように、出入り口の導線脇にマルシェスタイルの店を構え、季節感たっぷりのフレッシュな花が1束390円、よりどり3束990円。取り扱っている種類も幅広く、すべてに花の説明や扱い方が書かれた札がつき、要望の多い花はすぐさま次の仕入れに活かす。性別、年齢、ノーボーダーでセグメントすることなく、好きなタイミングで目的に見合ったシーズンものをさらっと買えるって理想的だ。一番気がかりなのは花の状態だが、市場から週に何度も直送されているから鮮度抜群。手入れをすれば長く付き合えるって、買う側からすると実は一番嬉しかったりする。

花好きの人が多く住む街は、きっと風通しが良くて機嫌のいい街だ。花は暮らしを変える力がある。となれば、いい花屋が、いい街をつくるということでもある。夏は、ポロシャツとひまわりを。冬はニットとバラを。服と花で、一度きりの季節を思いっきり味わいたい。

持ち帰り用バッグ。底の部分に水が入っており新鮮なまま運べる。

1. 週数回ある入荷日の朝、店の入り口はフレッシュな花で埋めつくされ“花の海”が現れる。 2. 手書きのPOPには花の種類別のアドバイスも。 3. 店内の一角にも、フラワーコーナーが展開。

UNIQLO FLOWERは他にも原宿店、新宿西口店、御徒町店、浅草店、ユニクロ PARK 横浜ベイサイド店、相模原中央店でも展開中。

UNIQLO TOKYO

1F-4F, Marronnier Gate Ginza 2,
3-2-1 Ginza, Chuo-ku, Tokyo
OPEN 11:00-20:00 Daily

UNIQLO TOKYO公式ページへ

※状況により、営業日と時間が変更となる場合がございます。

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