Circle of Objects

Photography by Gui Martinez Translation by Makoto Saeki

Light Flannel Wide Fit Checked Long Sleeve Shirt ¥2,990
Corduroy Regular Fit Straight Pants ¥3,990
(Uniqlo U)

ブルックリンでスタートし、今は東京を拠点にしてステーショナリーや革製品を作るブランド<ポスタルコ>。
その生活に寄り添った魅力的なプロダクトを生み出すデザイナー、マイク・エーブルソンが思う「長く付き合えるシンプルなデザイン」とは。ユニクロの服に触れ、彼が考える未来をつづってもらった。

LifeWear magazine WEB限定ムービー

Interview with Mike Abelson

Mike Abelson | マイク・エーブルソン
Product Designer
1974年、ロサンゼルス生まれ。LAのアートセンターカレッジオブデザインでプロダクトデザインを学ぶ。97年にNYへ移り、2000年にブルックリンでエーブルソン友理とともに〈ポスタルコ〉を創業。01年に東京に拠点を移し、日本の手仕事の技術とともに、ステーショナリー、革製品などをデザインして製品化している。

ぼくたちはサンゴだ

マイク・エーブルソンが考える、
未来のイメージ

ちょっと変わってるって言われるかな。どうしても捨てられなくて、鹿の骨を入れた箱を持ってる。できれば、もっとミニマルに、ほんとうに必要なモノだけに減らしたい。でも箱に入れて「鹿の骨」とラベルを貼って、スタジオに置いておくというのが気に入ってる。

ミニマリスト

ソクラテスは、どこへ旅するにも小さなコップなんかの持ち物を入れた小ぶりのバッグを身につけていたらしい。ある日、水を飲もうと川にやってきた。そこで彼は、ひとりの少年が手で水をすくって飲んでいるのを見たんだ。ソクラテスはコップを放り投げた。この話、ちょっとイイでしょ。

たしかに、なんにもまとわず、道具もなしで、身ひとつで生きていける。でも、それじゃ、持ってる力を実践しないで終わってしまう。いろいろなモノがあってこそ、身体的な力がまっとうされる。自転車は、脚の延長。帽子は、髪にプラスする。電話は、声を遠くまで届ける。家だって、皮膚の拡張といえないこともない。そんなわけで、ヒトは、ごっちゃりモノに囲まれて暮らしてる。ソクラテスの時代からずいぶん遠くへだたったけれど、まだモノなしではいられない。

スイミング

水泳こそは、いちばんミニマルなスポーツだと思ってた。たしかに、身に着けるのは、ちっちゃな水着だけ。でも、気がついたんだ、プールがなけりゃ!

ともだち

ペンは、紙があるからこそ書ける。電話は、電気がなけりゃ使えない。持っているモノは、お互いがあってこそというともだち関係で、助け合っているうちにどんどん親しくなっていく。

ヨーグルト

ヨーグルトが好き。善玉バクテリアが含まれてるんだって。食べると、カラダとヨーグルトの中のバクテリアの沈黙の会話がはじまる。バクテリアは、消化と免疫に、大きな役割を果たす。カラダには、無数の違った種類の微生物が生存してる。この微生物のDNAが、ぼくたちのDNA以上のものを付加してくれるんだ。まるきりコミュニティそのものだ。カラダの中は、ひとつの共同体。外側は、カラダをかたち作る物質でできている。だから、ぼくは協働しているさまざまなもののコラージュだ。

ベーカリー

あるローカルなパン屋には、レーズンパン、チーズパン、タマゴサンドなんかがトレイにのせて積んである。でも、このパン屋が売ってるのは、それだけじゃないんだ。へら、より糸、ペンキ、バケツ、それに鍵まで作ってる。このパン屋が、こういうものをパンに活かそうとしたら、どうなるだろう? 鍵パン、糸パン、ペンキ入りのパン。このときのパンというのは、中に隠したものの容れ物だ。パンと道具との境は消えてしまっている。

サンゴ

サンゴってなんだろう? 思い浮かべるのは、水面に見えるサンゴ礁で、それって小さなサンゴの死骸が積み重なってできたものだ。そのサンゴの中にもまわりにも生物がいて、サンゴと共生するカラフルな世界ができている。ぼくたちは、サンゴみたいだ。ぼくたちのまわりのものが、ぼくたちを生かしてくれていて、それなしでは完結しないから。

超個体

ヒトは、個体ではなく、ヒト的なものと非ヒト的なもので構成された超個体だ。その相互作用があってこそ、個性が決定される。ミニマリストとは、まるきり逆だ。これは、なにを意味するのだろう?

ヒト自身について、つまり内なるものもまわりのものも含む存在について、どれくらい考えられるかに、未来はかかってる。超個体というものについてだ。視野を大きく広げてそのことを知った上で、なにを選ぶかを決めたい。ひとつのモノを買うだけでは終わらない。自分たちの存在を完成させるために、いくつものモノのコミュニティを作っているのだから。

Interview with Mike Abelson

LifeWear magazine WEB版限定 マイク・エーブルソンさんへのインタビュー

東京駅近くにある〈ポスタルコ〉の店舗。惜しまれつつも2020年12月で閉館予定のホテルクラスカ701、702号室は、マイクさんが内装デザインを手がけた。今回の撮影には彼の家族も参加し、自身が着用する衣装をスタイリングしてくれた。postalco.net/
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