
今季のコレクションについて教えてください。
ゆるめのフィット感とボクシーなボリューム感がポイントです。テーマにしたのは、おおらかさ、気楽さ、そしてドレープ感です。新しいクオリティのジャージーを開発するため、これまでメンズ・ウィメンズの両方で様々な取り組みをしてきました。たとえば、テーラードスーツに合わせたタートルネック。これは、同じジャージー素材でも重量感が異なります。とてもすっきりしていながらリッチな印象で、これまでのスーツの概念を一新させています。

より汎用性のあるジェンダーレスな傾向が、今回のコレクションにも見られるようです。なぜでしょうか。
2023年秋冬コレクションには、メンズ・ウィメンズの両方で着られるようにデザインした服が何点かあります。これまでもジェンダーレスの装いにはずっと関心があったのですが、今ではひとつの大きなトレンドになっています。これは単なるハイファッションやアヴァンギャルドな現象に留まるものではなく、今日の社会的な傾向です。男性がウィメンズを、女性がメンズを買う。そんな結びつきがあると思います。
Uniqlo Uといえば、革新的で機能性の高いディテールが特徴です。今季のポイントを教えてください。
デザインで妥協せず、技術を強調しすぎることもなく、機能性を高めていくことを目指しています。日々の行動、例えば自転車に乗っている時に腕を守るための機能を考えながら最適なポケットの位置を決めるなど。あと実は、私たちはいつも隠れポケットをデザインしています。Uniqlo Uのジャケットを買って数ヶ月後にやっとその隠れポケットの存在に気付いた、なんて人もたまにいるようで、それは嬉しいことですね!

「パーフェクトTシャツ」と呼んでいるベストセラーのUniqlo UのTシャツについて、このデザインの決め手と、新作のアレンジについて教えてください。
このパーフェクトTシャツがロングセラーになっているのはとても嬉しいことです。まず取り組んだのは、ジャージー素材の編み方とクオリティへのこだわりでした。開発チームと一緒に、このドライな質感を生み出しました。薄すぎず重すぎない完璧な仕上がりになるまで何度も研究を重ねました。ミリ単位でこだわり抜いた襟の編み方もポイントです。それからカラーリングは毎シーズン、かなりの時間をかけて洗練されたカラーパレットを作り出しています。いつも言っていることは、美しい色も安っぽい色もかかるコストは同じだということ。しかもユニクロは、洗練された色彩の文化がある日本のブランドですからね。
今季のカラーパレットはシンプルですね。とても豊かでありながら、主張しすぎません。インスピレーションはどこから来ているのでしょうか。
毎シーズン、多くの時間をかけてカラーリングを考案しています。同じ色でも生地の仕上がりによって様々なニュアンスが生まれます。今シーズンのキーカラーは“あずき”色で、ブラウンとパープル、もしくは赤褐色の中間の色合いです。色の存在というのは、とても興味深いものです。たとえばチームで別々に色の構想を準備していながら、打ち合わせで全く同じものが提案されるなんてこともあるんです。
今季のキーコンセプトは「イージー・シック」ですが、その意味を教えてください。
快適さとリラックス感のちょうどいいバランスを取ることです。誰も服に自由を奪われたくはありませんよね。ストリートウェアは今日の私たちの装いに非常に大きな影響を与えています。スポーツウェア、ワークウェア、ミリタリーウェアには、機能的で快適に過ごすための知恵が詰まっています。これらのトレンドに寄り添いながら、私たちはエレガントであることにこだわっています。カジュアルな装いをより良く引き上げることが重要であると考えているからです。