Uniqlo U 2022春夏コレクションのコンセプトについて教えてください。
クリストフ・ルメール(以下CL) Uniqlo Uのコンセプトはずっと変わりません。目指すのは、動きを妨げず、長く使えて、毎日の暮らしに新たな価値をもたらす、機能的で普遍的なエッセンシャルアイテムです。これはユニクロのコンセプトであるLifeWearに通じる考え方です。新しいコンセプトはありませんが、シーズンを追うごとに異なる趣向を凝らしています。今回は着心地の良さや軽快さを追求し、新しい風を吹き込めるように工夫しました。
今回のコレクションは、現代の暮らしとどのようにつながっていますか?
Uniqlo Uとユニクロが掲げる理念は、これまで以上に日々の暮らしとのつながりを深めていると思います。それは長く大切に着られる実用的で魅力的な服をつくることであり、そしてその服がワードローブの頼れるパートナーになれたならとても嬉しいことです。今、服は数多くは必要ないということに皆が気づき始めていて、確かに生活にそれほど多くのモノは必要ないのかもしれません。ちょうどいい理想の服がいくつかあれば、それでいい。私たちが目指すのはそんな服です。
今回のコレクションには、通勤・通学が快適になるようデザインされている服がいくつかありますが、その特徴を教えてください。実際にどうやって通勤されていますか?
人々の行動パターンも変わるものですね。パリのような大都市では、どこへでも自転車で行き来する人が増え、これまでの通勤手段に大きな変化が生じています。私自身も自転車で仕事場まで通っています。短~中距離くらいを移動するのに、簡単で健康的なのは自転車ですから。チームの同僚たちも同じように考えています。それを踏まえて、実際に、実用的なバッグや丈の長すぎないコートなどのデザインに取り組みました。その中で、サイドにスリットを入れたり、フードを付けたりと、自転車通勤時にも快適に過ごせるような工夫を凝らしています。
コレクションの主軸となるアイテムについて教えてください。また、そのアイテムを選んだ理由を教えていただけますか?
ウィメンズとメンズのそれぞれにコレクションのメインとなるアイテムを用意しました。例えば、メンズでは、ゆったりとしたサイズ感のボクシーなオーバーサイズフーデッドブルゾン。シンプルなブルゾンですが、ボリューム感が独特です。フードが襟元に収納できるややオーバーサイズなデザインで、ハリのあるコットン素材を使用しています。こうした定番アイテムの素材やボリューム、カラーなどに着目して絶妙なアレンジを加えることに関心を寄せています。今回は他ではあまり見られないような色褪せた感じのあるユニークな中間色を見つけました。ウィメンズでいえば、ワークウェアの味わいがある後染めデニムのシャツコートです。共布のベルト付きで、コートとしてもドレスとしても着ることができます。いつものようにTシャツとTシャツドレスのウエイトやジャージー素材の仕上げにもこだわり、緻密に試行錯誤を重ねました。暑い夏でも快適に過ごせるよう、エアリズムコットンの優れた技術を採用しています。そして、これまでもずっと大切にしてきた、ジェンダーレスに着てほしいというコンセプトが実際に機能しているのを実感しています。ウィメンズとメンズというカテゴリーを超えて、自由に選んで楽しめるアイテムでもあるはずです。
2022春夏コレクションのカラーパレットについて教えてください。これらのカラーを採用した理由は何でしょうか?
主張しすぎず調和しやすい色を選ぶよう配慮しました。ユニークな中間色を絶妙なバランスに仕上げています。セージグリーン、サンド、ライトネイビー、サンセットといった中間色をメインに、アクセントとして明るめのオレンジやヴァーミリオンを使用しました。そしてブラック、チャコール、ホワイトと、少しグリーンみを帯びたホワイトがカラーリングの基調となっています。
多くの場合、良い服をさらに進化させるのは「ディテール」と言われています。それは必ずしも物理的に小さい部分という意味ではなく、袖幅を広げたり、ポケットの位置を変えたりという、「選択」と思われます。今回のコレクションで最も気に入っているディテールは何ですか? また、コレクションのアイテムが“意志のあるデザインがつくるエッセンシャル”である理由を教えてください。
ベーシックなデザインと退屈なデザインとの境界は紙一重です。意思のあるデザインでエッセンシャルな服を生み出すことこそが、Uniqlo Uの本質で、私たちはサイズやカラー、袖のデザインや袖まわりのボリューム感、50もある異なるベージュの色合いからひとつの色を選び出すなど、微細ながらも決定的な違いを生むディテールに最大限の注意を払っています。例えば、今回のコレクションでは、ウィメンズの袖のボリュームに力を入れて取り組みました。それは、ブルゾンや、袖幅の広いTシャツ、Tシャツドレスの袖などに注目してみると、エッセンシャルなアイテムでも確かな個性を持たせられることがよくわかると思います。
Uniqlo Uコレクションは12シーズン目を迎えます。最初のコレクションから、チームが服をデザインする過程で変わったこと、あるいは当初から変わらないことはありますか?
最初から振り返ってみると、おもしろいことに初めから全てが存在していました。今と同じ理念がUniqlo Uのデビュー当初からあったのです。変わったことといえば、シーズンごとに改良を重ねていることくらいです。Uniqlo Uでは、デザインと生産のプロセスを向上させる努力を絶えず続け、ミニマルなデザインにおいて重要度が上がっているものは何か、下がっているものは何かを常に問い続けています。グローバルなマーケットにおいて、経歴や国籍、年齢、社会的グループなどの違いを超えたすべての人々に向けて服を作る。そして、販売を通じて人々のニーズをより深く理解し調整を重ねてきましたが、基本的には当初からの方向性に変わりはありません。
あなたのアトリエは、チームワークに力を入れていることで知られていますが、コンセプト、素材、デザインに関してアーティスティック・ディレクターの立場でどのようにチームと仕事を進めていますか?
チームワークこそがデザイナーという仕事の本質であると信じています。服のデザインは、デザインの段階においても商品化においても大変な集中力を必要とする複雑なプロセスです。コレクションをつくるには長い時間と多大な労力がかかります。“意志のあるデザイン”によってシンプルなスタイルにユニークな個性を持たせるのは、決して簡単なことではありません。実現するには、チーム全員のエネルギーと思考力、意見交換が不可欠です。それが私たちの取り組む課題であり、フランス、日本、そしてアメリカを拠点とする素晴らしいチームと一緒に仕事ができることを本当に嬉しく思っています。
最後に、今後に向けて考えていることを教えてください。
今後もこれまでと同じ方向性で考えていますが、毎日の暮らしを服のデザインで改善していくというUniqlo Uの理念を実現していきたいと考えています。