プレスリリース

2007年04月04日

コントワー・デ・コトニエの舞台裏 ~「考える人」2007年春号~

~「考える人」2007年春号(新潮社)より転載~

フランスから世界中の母娘へのメッセージ

コントワー・デ・コトニエ代表取締役会長兼CEO
フレデリック・ビューズ (Frédéric Biousse)

20070404_cdc1.jpg 衣料品のブランド「コントワー・デ・コトニエ」がスタートしたのは一九九五年のことでした。最初の店ができたのは南仏のトゥールーズです。家族経営の小さなブランドでした。私は創業メンバーではありませんので、当時の様子を肌で知ることはできませんが、コントワー・デ・コトニエは短い間に人気を集め、フランス人なら誰でも知っているブランドにまで成長しました。
 私がコントワー・デ・コトニエに入ったのは、三年前の二〇〇四年です。その頃はすでに八〇店舗まで拡大しており、さらに店舗は増えてゆく勢いでした。
 急成長した原動力は、ブランドとしての魅力はもちろんのこと、効率的な経営にもあったと思います。しかし、グローバルな展開をしている世界のブランドとして捉え直した場合には、古いスタイルの家族経営であることには変わりなく、そのままでは成長にも限界があったと言えるでしょう。
 フランスのファッション業界は、そもそも家族経営であることが多いのです。しかし顧客の支持を拡大し、さらに可能性を追求しようとしていたコントワー・デ・コトニエは、家族経営の会社から脱し、世界のどこでも通用するグローバルな企業へと変貌しようとしていました。その移行を軌道にのせるために、私が迎え入れられたというわけです。
 その後の三年間で、家族経営からプロフェッショナルな経営へと全面的に変身することに成功しました。現在では二八〇店舗まで規模を拡大しています。短期間でこのような成功をおさめた例は、フランスでは比較的めずらしいことではないかと思います。
 その間に行ったのは、経営のスタイルを完璧に一新したこと。チーフ・デザイナーも変えました。そして新たに二〇〇店舗をオープンしたこと。二〇〇店舗のうち一三〇店舗をフランスに、五〇店舗はフランス以外のヨーロッパ、二〇店舗はアジアです。商品管理や輸送のシステム、ITのシステムも新しく構築し直しました。結果として本社の規模も三倍にまで拡大することになりましたし、十年以上前のトゥールーズの小さな店からは想像もできなかった成長を遂げました。そして二〇〇五年からは日本のファーストリテイリングのグループ企業のひとつになり、東京青山の旗艦店を中心に日本の皆様にも幅広く受け入れられるようになったのです。

手が届く「贅沢さ」

20070404_cdc2.jpg 九五年設立当時との違いは、経営形態や企業の規模だけではありません。商品もだいぶ変わりました。設立当時は、ナチュラルでカジュアルなベーシック・ファッションが中心でした。化繊を使わず、すべて木綿や麻など自然素材のファブリックで生産する──これが、コントワー・デ・コトニエの方針でした。
 自然素材を使う、ということについては今も昔も同じです。しかし最近はカシミア、シルク、アルパカなど、これまで使わなかった高級素材も積極的に扱うようになり、商品全体のグレードが一段も二段も上がった、と言えるのではないかと思います。
 ですから、設立当時よりも二〇パーセントぐらい平均定価も高くなっています。私たちの商品の平均定価は、日本円で一万六〇〇〇円ぐらい。ちょっと贅沢だけど、手が届かないわけでもない。高級品とカジュアル衣料品のちょうど中間に位置する価格帯だと思います。
 もうひとつは──パリで人気を上昇させた最大の理由でもあるのですが──、コントワー・デ・コトニエがこれまで以上にファッショナブルになったということです。トレンドを先取りするデザインや、可愛らしさの要素も増えました。「今年はゼッタイこれを着てみたい」と顧客に感じてもらえるようなデザインを常に意識しています。
 コントワー・デ・コトニエは世代を問わずに支持をいただいているのが特徴だと思います。二〇歳未満、二〇歳代、三〇歳代、四〇歳代、の四世代で区切ると、それぞれの層が占める割合がすべて約二〇パーセントなんです。五〇歳以上をひとつにまとめてしまえば、これもまた二〇パーセント(笑)。平均年齢は三〇歳ぐらい。典型的なタイプとしては、都会に住んでいて金銭的には余裕があり、ファッションに強い興味のある女性、ということになるでしょうか。
 パリには老舗デパートとして有名なギャルリーラファイエットがあります。このデパートで一八歳から二〇歳までの顧客にアンケートをとったところ、八〇パーセントの女の子が「買ってみたいブランド」にコントワー・デ・コトニエの名前をあげました。彼女たちにとっては、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールと同じように、コントワー・デ・コトニエは価値あるブランドになっているのです。

「近寄りがたい美しさ」ではなく

 私たちのブランドが注目を浴びるようになったもうひとつの理由が、一九九七年に始めた「母と娘のモデル募集」です。コントワー・デ・コトニエのファッションショーや広告には、プロフェッショナルのモデルではなく、顧客から募った母と娘に登場してもらっています。
 一九九七年、南仏トゥールーズの一号店のウィンドウの内側で、コントワー・デ・コトニエのチーフ・デザイナーがディスプレーの最中にひと休みしていたとき、ショップの前を通りかかったり覗き込んだりして買い物を楽しんでいるのは、圧倒的に母と娘のペアが多い、ということに気がついたのです。
 娘が買いたいブランドを母親も着てみたい。母親が着るような大人のブランドを娘も着てみたい。そういう望みを満たす服こそがコントワー・デ・コトニエならではの価値になると直感したのです。それは、マーケティングによって導き出されるものとは違う普遍的な価値、「本物の商品」の価値、ということですね。
 であれば、私たちのブランドを知ってもらい宣伝するためには、プロのモデルではなく、本物の母と娘、私たちの服を着たいと思ってくださる顧客に登場してもらうのが一番ではないか、そう考えてモデルのオーディションをスタートすることになったのです。
 毎シーズン、応募総数は約一万二〇〇〇組に及びます。そこから最終的に一〇組だけを選び出します。審査は外部の人に委託するのではなく、私たち自身が担当するようにしています。
 審査の基準ですか? うーん、とてもひと言では言えませんね(笑)。全体の印象、年代、国籍、肌の色なども考慮しています。何しろ私たちの服は、いまや白人や黒人、アジアの人々など、国境や民族を超えて受け入れられていますから、そのことを意識する必要があります。そしてモデルの母と娘の関係は実際に親密であってほしい。そしてここが大事で難しいところなのですが、母と娘のかもしだす雰囲気があまりにも決まりすぎてはいけないんですね。近寄りがたい美しさではなく、受け入れられる美しさであってほしい。
 今シーズンは豊かな自然のなか、自然光で撮影をするために、南アフリカでロケをしました。すべての写真は屋外での撮影です。雄大な光景のなかに母娘を置いてみたのです。今年はあらゆる場面で「自然」が注目されています。私たちがテーマに「自然」を選んだのは、そのような世の中の動向をとらえた結果です。草原や浜辺の自然を楽しむ母娘に、私たちの服を着てもらうことにしたのです。
 去年のテーマは「音楽」でした。ロックやジャズのライブの空気の中で、新作を紹介する演出を選びました。私たちは本物であることに大きな価値を置いていますから、ファッションショーにおいても、単なるムードづくりのために録音された音楽ではなく、本物のミュージシャンをショーに呼んで、ライブを行いました。素材に選び抜かれた本物を使うように、私たちはあらゆる場面で本物を大事にしたいと思っています。

日本の母娘が教えてくれたこと

20070404_cdc3.jpg この三年間で学んだのは、素早い展開が大切だということです。店舗数を増やすと同時に、収益性をより高める──この三年でやり遂げたことをひと言で言えばそうなります。そして私たちは、ヨーロッパで最も利益率の高い企業の一つになりました。
 家族と過ごす時間ですか? 忙しい仕事ですけど、もちろんありますよ。フランスには休暇はたくさんありますからね(笑)。南仏には別荘があるので、よく出かけます。旅行も大好きですね。アメリカにも行きますし、香港、シンガポール、タイなどアジアも好き。スキューバダイビングもできますから。ただ、休暇中であってもどうしてもその土地の店を覗いてしまいます(笑)。一週間の海外旅行であれば、そのうちの二日ぐらいは都市に滞在して、私たちの店を覗いたり、競合しそうな店をチェックしたりします。新しいタイプの店があれば研究もする。ただ、本当の意味でのライバルは今のところありません。超高級ブランドとマス・マーケットのブランドとの間に位置し、独自なポジショニングを保っているのは私たちだけだと思っていますから。
 フランス以外では、スペイン、イギリス、ベルギー、ドイツ、イタリア、韓国、日本にブティックがあり、これからオランダ、スウェーデン、香港、来年にはアメリカにオープンします。ヨーロッパではこれからの三年で新たに一五〇店舗、開く予定です。アジアにはすでに二一店舗がありますが、やはりこの三年で一〇〇店舗まで増やす計画。私たちの店は三年後に世界で五〇〇店舗を数えることになります。
 国が変わってもコレクションの内容はまったく同じ。ライセンス生産もしません。コントワー・デ・コトニエはどこであってもフランス直輸入の服ということになります。店の雰囲気も、接客のスタイルも、まったく同じ。ただひとつだけ違うのは、新しい国でオープンした際には、母と娘のオーディションで必ずその国の母娘を一組選び出すことぐらい。
 日本にはすでに一三店舗が開いています。知名度はぐんぐん上がっていますし、顧客の信用度も大変高くなっています。
 日本でオープンした年に銀座店で母娘のオーディションをしたとき、いちばん強く印象に残ったのは、日本の母娘がとても幸せそうに見えるということでした。親密さが際立っているように感じたのです。
 去年の秋に青山店で行ったオーディションには四〇〇組が集まりました。審査の結果選ばれた一組の母娘を一週間パリに招待し、各国のプレスを含め九〇〇人の観客が集まるファッションショーに出演してもらいました。その後、パリを離れて、三日間をかけて南アフリカで撮影したのです。
 できあがってきた写真を見ると、彼女たちがとても自然に、そして幸せそうに写っていることがおわかりいただけるでしょう。プロのモデルを使っていたら表現できない何かが、そこには写っている。私たちの服は、幸せそうな母娘に着てもらえるのが一番うれしい。日本に私たちの店を出して再確認したのは、そのことでした。
 彼女たちの表情と佇まいが、私たちのブランドが目指すものを改めて教えてくれた──
そう思っています。

20070404_cdc4.gifコントワー・デ・コトニエは、ファーストリテイリングのグループ企業のひとつ。心と心のつながり、気さくな感じや親密さを大切にしているブランドです。ちょうど、母と娘の間柄で感じるような、そんな気持ちがこめられています。100%パリ発のデザイン、ナチュラルな素材、程よいトレンド感から、「手が届くパリのコレクション」、「日常的に着られるコレクション」としてたくさんのパリジェンヌから支持され、フランスコレクションブランドを語る上で欠くことのできないブランドとなっています。                     www.comptoirdescotonniers.co.jp

「考える人」2007年春号
(文/取材:新潮社編集部、撮影:菅野健児)
詳しくは、新潮社のホームページをご覧下さい。